火星周回機にトラブル、「キュリオシティ」着陸に影響の可能性
【2012年7月18日 Universe Today】
火星探査機「マーズ・オデッセイ」のトラブルの影響で、来月予定されている火星探査車「キュリオシティ」の着陸に支障が生じるかもしれない。
8月5日(日本時間)の火星着陸を目前にしている探査車「キュリオシティ」にとって、最も困難な課題は着陸だ。着陸はキュリオシティを乗せている「MSL」(マーズ・サイエンス・ラボラトリー)のコンピューターによってのみ制御され、火星の大気圏突入から着陸までの7分間は地球との通信もできない。さらに、火星からの信号が地球に届くまでは約14分かかる。つまり、大気圏突入の信号が地球に届いた時点では、すでに着陸の成否が決まっている。そのため、「キュリオシティ」の研究チームはこの時間を「恐怖の7分間」と呼んでいる。
しかし、火星周回衛星「マーズ・オデッセイ」に発生したトラブルで「恐怖の7分間」がさらに延びることになるかもしれない。
「着陸自体には問題ありません。問題は、データのやり取りにかかる時間です」(NASA火星探査プログラム室長のDoug McCuistionさん)。10年以上火星周回軌道を飛行している探査機マーズ・オデッセイがデータの中継を行うことになっているが、今年の6月からトラブル回避のためのセーフモードに入ったことが数回あり、姿勢制御システムにも問題が生じている。原因は調査中だ。
「キュリオシティ打ち上げ直後には、その着陸予定地点を他の火星周回機に伝えて、着陸時に真上を通るような軌道に変更できるようにしました」(McCuistion氏)。
火星を周回中の2機、NASAの「マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)」とESAの「マーズ・エクスプレス」は、既にMSLの到着に合わせた軌道変更に入っている。だがトラブルが起こっているマーズ・オデッセイは集合場所に到達できないかもしれない。その場合、MSLが大気圏突入し着陸したことを知らせる信号がマーズ・オデッセイを経由して地球に届くまで、数時間もかかってしまう可能性がある。
MROもMSLの大気圏突入とキュリオシティの着陸をとらえる予定ではあるが、即時にデータを経由してくれるマーズ・オデッセイとは異なり、MROはデータの記録後に再生することしかできない。またもう1機のマーズ・エクスプレスの軌道からは、着陸過程の終盤を見ることができない。つまり、着陸までの全過程を見守るためにはマーズ・オデッセイが必要なのだ。
7月11日、マーズ・オデッセイは常にアンテナが地球に向くようなセーフモードに入った。コンピューターが再起動しなかったため、メモリに残っている診断データを解析し、それに基づいてセーフモードから復帰させ、火星にアンテナを向けさせた。
「我々はいま、マーズ・オデッセイによる観測やリレー通信を再開するための慎重な過程に入っています。また、他の軌道修正に問題はないかも確認する予定です」(「マーズ・オデッセイ」プロジェクトマネージャのGaylon McSmithさん)。
「着陸の7分間は、ミッション全体において最も危険な部分です。着陸に成功するのためには、数百ものプロセスがコンマ1秒単位で正しく自動実行されなければなりません。うまくいくためにあらゆる手を尽くしました。成功のために思いつくものは全てやってきました。無事着陸できると信じていますが、保障はありません。リスクは最後まで付きまとうでしょう」(MSLプロジェクトマネージャのPete Theisingerさん)。