木星大気の穴「ホットスポット」が形成されるしくみ

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【2013年3月18日 NASA

木星表面の雲が割れて穴ができる大気現象「ホットスポット」。地球の天候にも大きく影響する「ロスビー波」と呼ばれる大気波がその形成に関わっているという傍証が、探査機「カッシーニ」の観測から示された。


ホットスポット周辺の擬似カラー画像。青が高度の高い上層部分、赤の渦やプルームは下層部分

木星のホットスポット周辺の擬似カラー画像。矢印がホットスポット。右枠が渦、左枠がプルーム。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/SSI/GSFC)

ホットスポットが画像右上から移動してくる渦とぶつかり消えていくようす

ホットスポットが画像右上から移動してくる渦とぶつかり消えていくようすを12日間にわたってとらえた連続画像。右下の黒いバーが1万kmの長さを示す。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/SSI/GSFC)

巨大なガスの雲が渦巻く木星の表面には、ぽっかりと雲が晴れ上がった穴のような場所がまれに存在する。大きいサイズのものは「ホットスポット」と呼ばれ、どのように形成されるのかが長年の謎とされてきた。

ホットスポットでは、木星大気の下層がどうなっているのかを垣間見ることができる。人間の目には暗く見えるが、高温の下層が露出するので、温度を感知する赤外線観測では明るく見える場所だ。

多くの場合、8〜10個のホットスポットが濃い白い雲のプルームを挟んで等間隔に並んで形成される。こうした模様がどのように形成されるのかについては、冷たい空気がロスビー波と呼ばれる大気波で押し下げられることで表面に穴ができ、代わりに暖かい空気が押し出されて白い雲となる、という説明が可能だ(リリース元の動画1:20以降を参照)。

NASAのポスドク・フェローであるDavid Choiさんらは、探査機「カッシーニ」が土星に向かう途中の2000年暮れに木星を接近通過した際の観測から、北緯7度付近にある一連のホットスポットができてから消滅するまでのサイクルを2か月間のデータで追った。ホットスポットが属する高速ジェット気流や周囲の渦、プルームなどの動きをひとつずつ丹念に追って判明したホットスポットの動きは、ロスビー波によって作られるパターンと一致していた。

ロスビー波は地球においても、北極のジェット気流のコースを逸れさせてフロリダに寒波をもたらすなど、天候を大きく左右するものだ。地球では東西あるいは南北方向に作用するが、木星のホットスポットを作るロスビー波は大気中をまるでメリーゴーラウンドの木馬のようにぷかぷかと上下方向にも作用していることがわかった。その高低差は数十kmにわたり、波の底にあたる部分にホットスポットができると考えられる。