似て非なる地球と金星、生い立ちから違っていた可能性

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【2013年6月5日 東京大学大学院

生命にあふれる地球と酷暑の金星は、同等の大きさと組成を持つ岩石惑星という共通点がある。生まれてまもなく、どろどろのマグマから冷えて固まるまでは同じ道を歩んだと考えられてきたが、太陽からの距離次第でこの過程に違いが生じるという新たな理論モデルが構築された。


日没後の西の空でひときわ輝く金星

6月から8月にかけて、日没後の西の空でひときわ輝く金星。6月中はそばに水星も見え、下旬には大接近する。クリックで拡大(星図:ステラナビゲータで作成)

中心星からの距離と水の量の変化の関連を示したグラフ

新モデルに基づく、中心星からの距離と水の量の変化の関連を示したグラフ。クリックで拡大(提供:発表資料より)

今夏、夕方の西の空にひときわ明るく光る宵の明星、金星。地球の隣の惑星で、大きさや質量もほぼ地球と同等で「地球と双子の惑星」と呼ばれることもあるが、一方は生命を育む水の惑星、もう一方は二酸化炭素に覆われた高温の、ほとんど水が存在しない過酷な世界だ。何がこの違いを生んだのだろうか。

地球や金星のような岩石惑星が生まれたてのころは、どろどろに溶けたマグマの海(マグマ・オーシャン)がじょじょに冷えて固まっていくのが主要な形成過程であると考えられている。固まるまでの時間は質量で決まり、質量が同程度である地球と金星もその初期は似たような形成過程をたどってきたと思われてきた。

だがその場合、金星の水は海が蒸発して失われたことになり、天体内部に水が残っていない、また水素より重い元素である酸素が大気中に残っていないという現状との不一致があった。

東京大学大学院理学系研究科の研究グループは、惑星の冷却過程のみならず大気量の変化なども総合して考慮した初期惑星の進化モデルを構築した。

その結果、惑星のサイズや組成が同じでも中心星からのある距離を境に、冷却固化にかかる時間を左右する要素が切り替わり、結果として固化までの時間と残る水分量に大きく違いが生まれることがわかった。

中心星から遠い方(タイプ1)では数百万年以内にマグマが固化し、残った水で海ができる。中心星から近い方(タイプ2)では固化に長い時間を要し、その間にほとんどの水を失う。

太陽系ではこの境界は0.6〜0.8au(天文単位)の距離にあり、1auの地球はタイプ1にあたる。0.72auの金星は境界上なのでどちらのタイプか簡単には決められないが、タイプ2の特徴とよく一致し、従来の矛盾も解消される。

この研究から、同じ「岩石型惑星」としてひとくくりにされてきた金星と地球が、初期の段階から違った道を歩んできた別タイプの惑星である可能性が示された。惑星の生い立ちに関する新たなパターンが見出されたことになる。