超新星爆発の衝撃波のスピードを計測
【2013年8月12日 国立天文台野辺山/慶應義塾大学】
慶應義塾大学の研究チームが、わし座方向にある超新星残骸の衝撃波の膨張速度を精密に計測することに成功した。
慶應義塾大学の指田朝郎さんと岡朋治さんらの研究チームは、わし座の方向およそ1万光年彼方にある超新星残骸「W44」の衝撃波の膨張速度を精密に計測することに成功した。
太陽の約8倍以上の質量の恒星が最期をむかえる超新星爆発では、その衝撃波が周囲の物質の組成や物理状態に大きな影響を及ぼしながら膨張し、星間空間に運動エネルギーを供給している。だがこれまで、高密度の星間雲の中での超新星衝撃波の膨張速度や運動エネルギーを、観測に基づいて定量的に調べた研究は行われていなかった。
研究チームでは、国立天文台野辺山の45m電波望遠鏡と南米チリの10mASTE望遠鏡を用いて、超新星爆発の残骸W44とその隣接する巨大分子雲において、高温で濃い分子ガスが放射するミリ波・サブミリ波(電波の一種)を観測した。その結果、W44の衝撃波の膨張速度がおよそ毎秒13kmであること、また超新星爆発によって星間物質に与えられた運動エネルギー量は1050erg(エルグ)の1〜3倍と求められることがわかった(参考:太陽が1秒間に放出するエネルギーは約3.6x1033erg)。
さらに、毎秒100kmを超える局所的に極めて大きな速度を持つ分子ガスも検出され、局所的に特に強い衝撃波が存在することが示されているが、その理由はわかっていない。
今回の研究では、高温の濃い分子ガスの観測から、超新星爆発の衝撃波を受けた分子ガスの分布や運動を把握する手法が示された。観測結果と理論モデルを比較し、超新星爆発の総エネルギーを直接測定する可能性が開かれたことになる。