巨大ガス流「マゼラニック・ストリーム」、一部は大マゼラン雲由来

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【2013年8月13日 ESA/Hubble

2つの矮小銀河、大小マゼラン雲から伸びる巨大ガス流「マゼラニック・ストリーム」の組成調査から、どちらの銀河からどのようにガスが引き出されたかが明らかになってきた。天の川銀河などがこうしたガス流を材料として星を作る過程を知る上でヒントとなる。


マゼラニック・ストリーム

上:天の川銀河(可視光画像)とそれを取り巻くマゼラニック・ストリーム(電波画像)。下:大小マゼラン雲(右)とそこから伸びるマゼラニック・ストリーム(電波画像)。×印が組成を調べた領域。クリックで拡大(提供:Credit for the radio/visible light image: David L. Nidever, et al., NRAO/AUI/NSF and Mellinger, LAB Survey, Parkes Observatory, Westerbork Observatory, and Arecibo Observatory.Credit for the radio image: LAB Survey)

南天の夜空で肉眼でももやっと光る雲のように見える「大マゼラン雲」と「小マゼラン雲」は、天の川銀河の周りを回っている矮小銀河だ。1970年代、この2つの銀河からたなびくリボンのようなガス流が発見された。天の川銀河を半周取り囲むほど長大なこのガス流は「マゼラニック・ストリーム」(MS)と呼ばれる。

大小マゼラン雲は天の川銀河に近づく方向に移動しており、天の川銀河を球状に取り囲む高温ガスの圧力でマゼラン雲中のガスが押し出される。この圧力と、2つのマゼラン雲の間にはたらく重力相互作用の両方の影響で、MSが作られたと考えられている。だが、その由来がマゼラン雲のいずれかひとつなのか、あるいは両方なのかは、これまではっきりとはわかっていなかった。

Andrew Foxさん(米宇宙望遠鏡科学研究所)らの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡と超大型望遠鏡(VLT)を用いてMS中の6か所の領域の組成を分析し()、MS中のほとんどの箇所では酸素や硫黄などの重元素が少ないことを突き止めた。これはかつての小マゼラン雲の組成と一致していることから、20億年前に小マゼラン雲から出ていったものであることがうかがえる。

だが一方、マゼラン雲からすぐ近くの領域では硫黄が多く、比較的近年に大マゼラン雲から出ていったものであることがわかった。コンピュータシミュレーションでは、MSのガスのほとんどが、より重力の小さい小マゼラン雲由来であることが示されていたので、これは意外な結果だった。

やがて天の川銀河に引き込まれ、新たな星の材料となる可能性があるMSの起源が明らかになってきたことは、銀河の星形成について知るうえで重要な一歩になるだろう、とFoxさんは語っている。

注:「MS中の組成分析」 MSの向こう側に見えるクエーサー(遠方銀河の中心にある活動銀河核)からの紫外線を調べると、MSに含まれる元素についての情報が得られる。