銀河中心ブラックホールが促す分子生成
【2013年10月28日 東京大学大学院】
銀河中心ブラックホールの活動によるとみられるシアン化水素分子の大量生成がアルマ望遠鏡でとらえられた。今後こうした特徴からブラックホールを探す手法の確立が期待される。
多くの銀河の中心には、太陽の数百万倍から十億倍程度のとても重いブラックホールがある。こうしたブラックホールの形成・成長は、ブラックホールが属する銀河そのものの成長と関連性があるとみられるが、その詳しい過程を調べるためにはまず、さまざまな銀河の中心にブラックホールがあるかどうかを実際に観測する必要がある。
周囲の物質を活発に取り込む“育ちざかり”のブラックホールは多くの塵に覆われて観測が難しい。東京大学大学院理学系研究科を中心とする国際研究チームでは、さまざまな分子や原子からのミリ波・サブミリ波(いずれも電波の一種。塵にじゃまされない)放射を観測することで、ブラックホール探査法の確立を目指している。
今回研究チームでは、ろ座方向の銀河NGC 1097の中心にある活発なブラックホールの周りに存在する濃い分子ガスをアルマ望遠鏡で詳細に観測することに成功した。このブラックホール周辺では、シアン化水素(HCN:水素+炭素+窒素)が大量に生成されていることがわかった。ブラックホールから吹き出るジェットによる衝撃波でガスが加熱されているのが原因と示唆される。
こうしたブラックホール周辺環境に特徴的な分子の観測を逆手に取ることで、今後は塵に埋もれて可視光などでは観測できない「埋もれたブラックホールの探査」も可能になると期待される。