いて座A*のジェット、有力な証拠を発見

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【2013年11月21日 NASA

天の川銀河中心にある、太陽の400万倍もの質量をもつ超大質量ブラックホールに、高エネルギー粒子のジェットとみられるものが観測された。これまでも可能性が報告されていたジェットの存在を示す有力な証拠となるもので、ブラックホールの進化についての新たな手がかりとして期待される。


いて座A*周辺

いて座A*周辺をとらえたX線と電波の合成画像。ピンクはNASAの天文衛星「チャンドラ」によるX線画像、青は米国立電波天文台のVLAの観測による電波を示す。クリックで拡大(提供:X-ray: NASA/CXC/UCLA/Z. Li et al; Radio: NRAO/VLA)

多くの銀河にはその中心にとても重いブラックホールがひそんでいる。中でも活発なものは周囲の物質を旺盛に飲み込み、その反動で高エネルギー粒子のジェットを両極方向に噴き出している。

わたしたちがいる天の川銀河の中心にある、太陽の400万倍もの質量を持つブラックホール「いて座A*(エースター)」もかつては活発な時期があったと考えられているが、今は穏やかで、目立った活動はしていない。ジェットの存在を示唆する研究成果も報告されてきたが、決定的な証拠は見つかっていなかった。

Zhiyuan Liさん(中国・南京大学)らの研究チームは、いて座A*周辺から噴き出すガスを調べた。すると、X線で輝くガスの直線状構造と、周囲のガス物質にぶつかってできる衝撃面からの電波が観測された。これらはジェットの存在を示す強い証拠となる。さらに、X線のスペクトルは他の銀河中心ブラックホールで見られるジェットのものとよく似ていた。

観測から、ブラックホールの自転軸が天の川銀河全体の自転軸と揃った向きであることもわかった。100億年以上ガスやダストが安定してブラックホールに流れ込んでいるということになる。もし過去に大きな銀河同士がぶつかり中心のブラックホール同士の合体などがあれば、自転軸はランダムな方向に向くはずだ。

また、今回見られたのと反対の極方向にはジェットが見つからなかった。ガスやダストにさえぎられているか、あるいは観測されるほど勢いが強くないのかもしれない。

2008年に見つかった銀河中心部から広がる謎の巨大バブル構造の起源や、ブラックホールの進化など、今回の観測成果は多くの謎の解明を前進させる手がかりとなるだろう。