標準モデルに謎を投げかける、観測史上最大級のガンマ線バースト
【2013年11月25日 JAXA】
今年4月に観測されたガンマ線バーストが、比較的近くの宇宙で起こったにもかかわらず宇宙初期の遠方で起こったものと同じ性質を持つことが明らかとなった。従来からの標準的なガンマ線放射モデルに疑問を投げかけている。
今年4月27日、極めて強いガンマ線バーストがしし座の方向に検出された。分光観測によって発生源までの距離を測定したところ、ガンマ線バーストとしては近い38億光年であることがわかった。この距離はビッグバンから100億年という宇宙年齢に相当する。このガンマ線バースト「GRB 130427A」は「モンスター」とも言うべき巨大な爆発で、同規模のものが38億光年(赤方偏移0.34)という近傍宇宙で観測される頻度は60年に1回程度と推定されており、宇宙年齢70億年以降に発生したガンマ線バーストとしては観測史上最大のものだ。
GRB 130427Aは、もともとの放射エネルギーが最大級だったうえに異例と言えるほど近傍で発生したため、過去23年間でもっとも強いガンマ線と明るいX線残光と可視光残光が観測され、爆発的な初期の放射から数日後まで続く残光への時間的発展がいままでにない精度で調べられた。
地上と宇宙から観測を行った望遠鏡や人工衛星などの中には、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に搭載された全天X線監視装置「MAXI」、国立天文台岡山天体物理観測所のMITSuME望遠鏡3色カメラ、国立天文台石垣島天文台むりかぶし望遠鏡も含まれている。また、宇宙望遠鏡「フェルミ」は、予想を超える20時間という長時間にわたって高エネルギーガンマ線を検出した。
遠くの天体を観測することは、過去の宇宙の状態を見ていることに対応する。今回のバーストが起こった場所は我々の天の川銀河に近く、現在とほぼ同じ宇宙環境と言っても良いだろう。にもかかわらず今回のバーストは、初期の宇宙に発生している大多数のガンマ線バーストと同じ特徴をもつことがわかった。これは、従来からの標準的なガンマ線放射モデルに疑問を投げかける結果となった。
従来のモデルは以下のようなものだ。巨星の爆発で、光速に近い速度で噴出したガスが周りのガスと衝突して衝撃波が形成される。その衝撃波で加速された高エネルギー電子からのシンクロトロン放射が、ガンマ線バーストの残光として観測される。
このようにシンクロトロン放射で放たれる光子のエネルギーには理論的な限界があるが、今回のバーストでは、その限界を超える950億eVものエネルギーが検出されている。そのため、ガンマ線がシンクロトロンとは異なったメカニズムで放射された可能性が指摘されている。