ガンマ線バーストからわかる127億年前の宇宙
【2013年8月8日 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター】
127億年前に起こったガンマ線バーストの残光から、当時の銀河に含まれる元素組成が現在とどのように異なるかに関する調査が行われた。宇宙誕生から間もないころの化学進化を物語る貴重な観測成果だ。
米研究者らが、ガンマ線バースト(GRB:主に遠方宇宙から届くひじょうに強いガンマ線放射)の残光の分析から、宇宙誕生約10億年後の銀河に含まれるガスの組成を突き止めた。
このGRBは6月6日にNASAのガンマ線監視衛星「スウィフト」が検出したもので、4分以上も継続した「ロングバースト」に分類される。127億光年彼方の銀河の恒星が最期を迎える時の大爆発によって起こったとみられ、GRBの中ではかなり遠いものになる。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのRyan Chornockさんらは、すぐさま米アリゾナ州のMMT望遠鏡やハワイのジェミニ北望遠鏡を向け、このGRBのジェットで加熱された周囲のガスが光る「残光」を観測・分析した。残光はGRBが起こった銀河の中を通るので、その光を分析すれば銀河に含まれる星間ガスの組成がわかる。調査の結果、127億年前、つまり誕生してからおよそ10億年の初期宇宙にあったこの銀河は、太陽系の10分の1しか重元素を含んでいなかった。
生まれたばかりの宇宙に存在していたのは水素、ヘリウム、リチウムといった軽い元素ばかりで、時間が経つとともに恒星の核融合やその後の超新星爆発によって炭素や酸素など重元素が増え宇宙空間に広がっていく。この初期宇宙で仮に岩石惑星が作られるようなことがあったとしても、まだ生命誕生に至るほどの重元素はなかっただろうとChornockさんは話している。
研究チームでは、さらに遠く、さらに宇宙の誕生期にせまるGRBの観測を目指している。