120億歳の星に見つかったレアメタル
【2012年2月20日 マサチューセッツ工科大学】
天の川銀河のハロー部分にあるおよそ120億歳の星に、レアメタルの1つで、超新星爆発でのみ作られるテルル(Te)が存在していることがわかった。ストロンチウムやバリウムなど他の元素比も同時に調べられており、これら重元素の形成過程の解明の助けとなりそうだ。
およそ137億年前の宇宙には水素とヘリウム、微量のリチウムしか存在していなかったが、それから3億年後には最初の星が誕生し、より重たい元素が恒星の核融合によって誕生したことが知られている。恒星の中の核融合や超新星爆発の際に作られた元素は、他の恒星や惑星の材料として取り込まれ、現在の地球の原料ともなっている。
今回アメリカなどの研究チームが、地球から数千光年かなた、天の川銀河を球状に囲むハロー部分にある、生まれてから120億経った3つの星の光の成分を調べた。テルル(原子番号52、Te)による紫外線の吸収線を見ることで、宇宙空間で初めてテルルの存在を確認した。どうやら、これらの星が形成された120億年前には既にテルルが作られていた可能性が高いようだ。
星の中での核融合では鉄やニッケルまでしか作られないが、テルルのようにさらに重たい元素は、非常に重い恒星の超新星爆発の際に起きるr過程(注)で合成される。同様に作られるストロンチウムやバリウムの含まれる比率も調べたところ、3つの星で全て同じであり、超新星爆発での元素合成の理論ともよく合うことがわかった。
研究を行ったAnna Frebel氏は、セレンや錫など、検出困難な他の元素についても探していきたいとしている。
注:「r過程」 超新星爆発の際に、ごく短時間に連鎖的に重元素が合成される過程のこと。rはrapidの頭文字から。