月探査機の月食の過ごし方
【2014年4月9日 NASA】
地球から見る月食は美しい天文現象だが、太陽光から電力を得る月探査機にとって地球の影に入ってしまうことは死活問題だ。NASAの探査機LROは、4月15日の月食でかつてない長時間を影の中で過ごすことになる。
4月15日、月が地球の影にすっぽり入って全体が暗く見える皆既月食が起こる。アメリカ大陸では全過程が見られる好条件だが、日本からは東日本で昇ってきた直後の月がわずかに欠けているのが見えるだけだ。今年10月8日には好条件の皆既月食があるので期待して待とう。
さて皆既月食のとき、月面では、昼側のどこにいても「地球による皆既日食」が1時間以上にわたって続いている状態となる。天文ファン垂涎の状況ではあるが(注)、太陽光から電力を得ている月面探査機にとっては死活問題だ。
2009年に打ち上げられたNASAの月周回探査機「ルナー・リコナサンス・オービター」(LRO)が月面で月食を迎えるのは今回が初めてではないが、軌道上で昼側に回る時間と月食の時間がちょうど重なるため、数時間もの間を影の中で過ごすことになる。ミッションチームではLROの機器をオフにして随時バッテリーの状態を監視するなどの対策を予定している。
今回は機器を使うことができないものの、これ以外の月食はLROにとって現地にいるメリットを活かすチャンスでもある。月面の温度がどれだけ下がるかを測定し、地表の組成を探る材料にできるという。
注:「月面で見る日食」 月面から見る地球は見かけ上太陽よりずっと大きいので、地上から見る皆既日食のような輝くコロナは見られない。