月の斜長石に見つかった水、従来説と矛盾
【2013年2月28日 NASA/space.com】
アポロ計画で採取した月の高地の石から微量の水が発見された。有力な月誕生プロセスでは水が存在しなかったはずの創成時に、すでに水があったことを示唆するものだ。
月の形成に関して有力視されているのは、誕生したばかりのころの地球に火星サイズの天体が衝突し、その残骸が集まってできたという巨大衝突説だ。その衝突の時、大量の水が蒸発して宇宙空間へ逃げ出し、その結果誕生当時の月はほとんど水のない乾燥した地だったと考えられている。
米ノートルダム大学のHejiu Huiさんらの研究チームが発表したのは、そうした月形成理論を覆す研究成果だ。1970年代にアポロミッションで持ち帰られた石を分析したところ、鉱物の結晶構造中に微量の水が見つかったのである。水といってもいわゆる液体の水ではなく、水素と酸素を含む化合物だ。
分析対象となったのは月の高地(月面の明るい部分)から採取された斜長石で、生まれたての月の地殻が固まる前、まだどろどろに溶けたマグマの海が広がっていたころに結晶化して表面に浮いたもの、つまり当時の記憶を残しているものと考えられている。そこに水が含まれるということは、形成当時の月に水が存在していたことを示しているという。
「従来の説のプロセスよりももっと長い時間をかけてマグマの海が固まっていったことを示唆しているのかもしれません」(Huiさん)。