月の水は太陽風で作られた?
【2012年10月17日 University of Michigan】
アポロ計画で持ち帰られた月の砂に含まれるガラス粒子から、ヒドロキシ基が見つかった。こうした「水の材料」は、太陽風との作用で生成されたとみられている。
NASAの月探査機「エルクロス」の衝突調査など、数々の探査機の活躍によって、月の土壌に水が含まれていることが近年わかってきている。しかし、その水の起源については議論が続いていた。
米テネシー大学のYang Liuさんほかミシガン大学、カリフォルニア工科大学による研究チームは、アポロ計画で持ち帰られた月のレゴリス(細かい砂の層)のサンプルを赤外線分光器と質量分析計で分析した。すると、流星塵の衝突で砂の中に生成されたガラス粒子の中に大量のヒドロキシ基が存在することが明らかになった。
ヒドロキシ基は、水分子から水素イオンが1つ欠けている構造、つまり1つの酸素原子と1つの水素原子から成る(-OH)。「月のガラス粒子に含まれるヒドロキシ基の大部分は、太陽風によって月面に注がれた陽子の一部が酸素原子と結合して作られ、小天体の衝突で溶融したガラス粒子の内部に閉じ込められたものとわかりました」(ミシガン大学のYouxue Zhangさん)。
今回の発表は、レゴリスのガラス粒子がヒドロキシ基の貯蔵媒体であることを初めて示したものだ。レゴリス層は月の表面の大部分を占め、その半分はガラス質でできている。氷や水といったおなじみの形態ではないにせよ、ヒドロキシ基という水の材料は月のあちこちにあるのかもしれない。
またこの成果により、ベスタ、エロスのような小惑星や水星などの天体の表面に、太陽風によって発生したヒドロキシ基が存在する可能性も考えられる。このような天体はそれぞれが異なる環境を持っているものの、どの環境の中でも水が発生しうるという。