新衛星誕生の瞬間? 土星の環に痕跡
【2014年4月15日 NASA】
探査機「カッシーニ」の観測から、土星の環の縁に不思議なかく乱の痕跡が見つかった。小天体の重力的作用によるものとみられ、環の中から生まれるという説もある土星の衛星の形成過程を知る手がかりとなるかもしれない。
夜空で今一番注目の惑星といえば、4月14日に地球と最接近した火星だが、その後に続いて東の空に現れる土星も、これから見ごろをむかえる。
土星といえばやはり環がおなじみだ。小さな氷の粒でできた環は、明るいものから暗いもの、幅の広いものから細いものまでさまざま見つかっているが、小口径の天体望遠鏡でも見られる明るい主要部分は、外側のA環、内側のB環とに分かれる。
A環とB環を分け隔てている隙間は、それを発見したイタリア生まれの天文学者にちなんで「カッシーニの間隙」と呼ばれている。現在土星を間近で調査中の探査機にも同じ名前が冠せられているのはご存じのとおりだ。
その探査機「カッシーニ」が昨年4月に行った観測から、A環の縁に長さ1200km、幅10kmほどのかく乱されたような構造が見つかった。発表者のCarl Murrayさん(英・ロンドン大学クイーンメアリー)らは、これを小天体の重力的作用によるものとみている。
「こんなものは見たことがありません。今まさに小天体が環の中で生まれ、環から離れて一人前の衛星となろうとしているところを目撃しているのかもしれません」(Murrayさん)。
土星の衛星は、環を構成する粒子と同じく氷を主体とし、また土星本体から遠いほど大きい。こうしたことをふまえて、氷衛星は環の粒子から生まれ、他の衛星と合体しながら土星から離れていったのだとする説もある。
仮に「ペギー」(Peggy)と愛称が付けられたこの天体はおそらく直径1km足らずで、その小さな姿をとらえるのは難しそうだ。ただしNASAのカッシーニ研究員Linda Spilkerさんによれば、2016年後半にカッシーニが現場に接近予定ということなので、その時に詳しい調査ができるかもしれない。