“もや”のかかった低温の巨大ガス惑星
【2014年8月8日 国立天文台】
岡山天体物理観測所などでの観測から、系外惑星WASP-80bの大気に微粒子のもやがかかっている可能性が高いことがわかった。比較的低温の惑星大気にはもやがかかりやすいと理論上予測されており、その解明につながる貴重な成果だ。
WASP-80bは、わし座の方向およそ200光年彼方にある巨大ガス惑星だ。主星から0.03au(約450万km)しか離れていないが、主星が低温なので惑星の温度も摂氏300〜500度と比較的低く、灼熱というよりも「温かい」部類の環境である。低温の主星を持つ惑星は発見数がまだ少ないため、低温の大気をもつ惑星の観測もこれまでほとんど行われていなかった。
国立天文台と東京大学の研究者らが、岡山天体物理観測所の2つの望遠鏡と南アフリカのIRSF望遠鏡を用いて、このWASP-80bのトランジットを可視光〜赤外線の6つの波長で観測した。惑星が主星の手前を通り過ぎる(トランジットする)時の減光のようすから、惑星を取り囲む大気を調べることができるのだ。
その結果、赤外線観測では可視光に比べて惑星のシルエットが小さくなることがわかった。このことは、惑星の大気中に「もや」(微粒子)が漂っている可能性が高いことを示している。主星からの可視光はもやにブロックされるが、波長の長い赤外線だけは大気ごしでも見え、その分惑星が小さく見える(画像2枚目)。
WASP-80bのもやは、天王星やタイタンにみられる「ソリン」というタイプの微粒子なのかもしれない。ソリンは大気中のメタンガスが太陽光の紫外線と反応して生成されるので、メタンガスが安定的に存在しない700度以上の高温環境では存在しないと考えられている。つまり、WASP-80bのような低温の惑星なら存在する可能性があるのだ。研究チームは今後、この惑星の大気をさらに詳しく調べて、もやの性質を明らかにしていきたいと考えている。
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