2018年の木星は5月〜8月ごろに観察シーズンを迎えます。マイナス2等級と明るいのでよく目立ち、街中でも簡単に見つけられます。
木星を双眼鏡で観察すると、木星の周りを巡る4つのガリレオ衛星が見えます。日々並び方が変化する様子は見ものです。天体望遠鏡を使うと木星表面の縞模様や大赤斑も観察でき、さらに面白くなります。
2018年4月から10月ごろまでに起こる、木星と月との接近などは、以下のとおりです。このうち月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
4月 3日 〜 4日 |
月(月齢17)と接近 (›› 解説) | 深夜から明け方 |
4月30日 〜 5月 1日 |
月(月齢15)と接近 (›› 解説) | 宵から明け方 |
5月 9日 | 衝(しょう) (›› 解説) | 太陽の正反対に来る (深夜に南に見える) |
5月27日 〜28日 |
月(月齢12)と接近 (›› 解説) | 夕方から未明 |
5月下旬 〜6月下旬 |
てんびん座の3等星 ズベンエルゲヌビと大接近 | 最接近6月4日ごろ |
6月23日 〜24日 |
月(月齢10)と接近 | 夕方から未明 |
7月11日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる |
7月下旬 〜8月下旬 |
てんびん座の3等星 ズベンエルゲヌビと大接近 | 最接近8月17日ごろ |
7月21日 | 月(月齢8)と並ぶ | 夕方から深夜 |
8月 2日 | 東矩(とうく) | 太陽から90度東に離れる (日没のころ南に見える) 黄道座標系では7日 |
8月17日 | 月(月齢6)と接近 (›› 解説) | 夕方から宵 |
9月14日 | 月(月齢5)と接近 (›› 解説) | 夕方から宵 |
10月12日 | 細い月(月齢3)と並ぶ | 夕方から宵 |
木星は、10月中旬以降は太陽に近づいて見えにくくなり、11月下旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。その後は来年1月上旬ごろから、明け方の東天に見えるようになります。
木星以外の惑星にも注目してみましょう。金星が宵の明星として夕方の西の空に見えるほか、火星や土星も春から夏にかけて見ごろを迎え、宵空がとても賑やかになります。とくに7月末に地球と最接近する火星には大注目です。
惑星のほかにも月食や流星群など、楽しみな天文現象がいろいろ起こります。「アストロガイド 星空年鑑 2018」ではこうした現象の見どころや季節の星座を、書籍とDVD番組で詳しく紹介。さらに付属の天文シミュレーションソフト「アストロガイドブラウザ」で、現象の見え方や時刻などを調べることもできます。
iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使うと、端末を向けた方向の空を画面にシミュレーション表示するので、木星のある方向や周りの星、星座の名前が簡単にわかります。日時を変化させて月との接近をシミュレーションすることもできます。
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木星には60個以上の衛星が見つかっています。そのうちイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは大型の衛星で、双眼鏡や小型望遠鏡でも存在がわかります。1610年にガリレオが発見したことから、この4つはとくにガリレオ衛星とも呼ばれています。
ガリレオ衛星のうち、一番木星に近いイオはわずか2日弱で木星の周りを一回りします。一番外側のカリストも一回りするには約17日ほどしかかかりません。このため、ガリレオ衛星の位置は目まぐるしく変化します。木星の裏に回ったり木星の影に入ったりして、見えなくなっていることもあります。
衛星の動きをシミュレーション動画にしたので、観察の際の参考にしてください(I:イオ/II:エウロパ/III:ガニメデ/IV:カリスト)。図は上が北になっています。天体望遠鏡では像が回転していることが多いので見比べるときには注意しましょう。
天体望遠鏡で木星を見ると、縞模様があるのがわかります。口径5cm程度の小型望遠鏡でも、目立つ2本を確認できるでしょう。
口径が大きくなると、さらに多くの縞模様が見えてきます。気流が安定しているとき(風がないとき)や木星が空の高いところにあるときのほうが条件良く見えるでしょう。
さらに、大赤斑という模様も見えるかもしれません。大赤斑は地球数個分もの大きさがある、巨大な台風のようなものです。木星は約10時間で自転しているので、大赤斑が裏にまわっていることもあります。動画や以下の日時情報を参考に、タイミングを見計らって観察するようにしましょう。
大赤斑が中央付近に見える日時(薄明終了〜開始時で東京での地平高度が約20度以上):
7月:3日 20時50分 / 5日 22時30分 / 10日 21時40分 / 15日 20時50分 / 22日 21時30分 / 27日 20時40分
公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で木星を見ることができます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」などで検索してみてください。
天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、木星の見え方やガリレオ衛星の位置などを正確にシミュレーションできます。観測や撮影に便利です。
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡や双眼鏡を多数取り扱っています。縞模様や衛星の動きを、自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズや、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
天文雑誌「星ナビ」で火星、木星、土星の見どころや撮り方を特集しています。
木星は大きさ(赤道部分の直径)が地球の約11倍、質量が地球の約320倍ある、太陽系の惑星の中で最大の天体です。主成分は水素やヘリウムといった気体で、巨大ガス惑星に分類されます。また、約10時間で自転しており、これは太陽系の惑星の中で最速です。
特徴的な表面の模様は、木星の雲を見ているものです。雲は主にアンモニアやその化合物でできていますが、少量の他の物質が太陽光と反応することでオレンジ色に見えます。明るい部分(帯)は上昇気流の部分、暗い部分(縞)は下降気流の部分で、その中に見える大赤斑や白斑は木星の嵐です。まれに、木星に小天体が衝突し、その痕跡の模様が地上や宇宙望遠鏡で観測されることもあります。
また、非常に強い磁場を持っているため、北極や南極の周辺でオーロラが発生することもあります。
木星の公転周期は約12年です。したがって、地球から見ているとおよそ1年ごとに、星占いの星座を1つずつ進んでいくということになります。干支の12年で空を一巡することから、中国では「歳星(さいせい)」とも呼ばれます。
1970年代に「パイオニア計画」や「ボイジャー計画」によって探査機が木星に接近し、表面の詳細な観測や環の発見、新たな衛星の発見などの成果を挙げました。
1989年に打ち上げられた探査機「ガリレオ」は、史上初めて木星を周回しながら観測を行いました。ガリレオは1995年から2003年にかけて木星やその衛星を観測し、数々の美しい画像や科学データをもたらしました。また、土星探査機「カッシーニ」や冥王星・太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」も、それぞれのメインターゲットへと向かう途中に木星を観測しています。
2018年現在は探査機「ジュノー」が木星を周回しています(7月ごろに運用終了予定)。ジュノーはとくに、地球からはほとんど見えない木星の両極域を重点的に調べることを目的としています。
また、ハッブル宇宙望遠鏡によって衛星エウロパに間欠泉らしいものがとらえられたり、日本の科学衛星「ひさき」が木星磁気圏の観測を行ったりするなど、地上の天体望遠鏡や地球周回の衛星からの観測も活発に行われています。