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宵の明星 金星(2018年 春〜秋)

2018年の3月ごろから9月ごろまで、宵の明星の金星が見ごろです。やや低いものの、日の入り後に西の空で輝く様子はよく目立ちます。

時おり細い月と並ぶ光景は、とくに美しい眺めです。また、1等星や星団と並ぶこともあります。肉眼や双眼鏡で見たり、写真に撮ったりしてみましょう。

金星を見つけよう

宵の明星

金星は2018年3月ごろから9月ごろまで、「宵の明星」として見えています。夕方から宵の早い時間帯に西の空で明るく輝いているので、一目でそれとわかります。

今シーズンはあまり高くならないので、建物や山などに遮られてしまうことがあるかもしれません。観察場所として、西の空の見晴らしが良いところを見つけておきましょう。

形が変わる金星

地球・金星・太陽の位置関係により、金星は月のように大きく満ち欠けして見えます。また、月と異なり、金星は見かけの直径も大きく変化します。肉眼ではわかりませんが、倍率が高めの双眼鏡や天体望遠鏡で見るとよくわかります。天体観察会などに参加して、欠けた姿をぜひ観察してみてください。

2018年3月から9月までの夕空の金星の見え方。場所の設定は東京。囲み内は金星の拡大像(正立像)(ステラナビゲータでシミュレーション)。

他の動画は ›› アストロアーツYouTubeチャンネル [YouTube]

金星と月などとの接近

およそ1か月に1回くらいのペースで、金星と細い月が並んで見えることがあります。金星の輝きはそれだけでも美しいものですが、地球照(地球で反射した太陽光に照らされ、月の暗い側がうっすらと見える現象)を伴った幻想的な細い月と金星が夕空に並ぶ光景は、さらに見事な眺めとなります。金星と月の接近は肉眼でもよく見えますが、双眼鏡があるといっそう美しさが際立って感じられることでしょう。

また、金星と1等星やプレアデス星団などが並ぶこともあります。夕空では1等星や星団はやや見づらいので、双眼鏡で観察すると良いでしょう。

地上風景も入れた写真撮影にも、ぜひ挑戦してみてください。空の色や雲の形、街明かりの様子は刻一刻と変わっていきます。シャッターチャンスを逃さず、共演を記録してみましょう。

日付 現象備考
3月上旬 水星と大接近
›› 解説
最接近4日ごろ
3月19日 細い月(月齢2)、水星と並ぶ
3月下旬 天王星と大接近
›› 解説
最接近29日ごろ
4月17/18日 細い月(月齢1/2)と
やや離れて並ぶ
4月下旬 プレアデス星団と接近
›› 解説
最接近25日ごろ
5月上旬 アルデバランと並ぶ最接近2日ごろ
5月17/18日 細い月(月齢2/3)と
やや離れて並ぶ
6月上旬 ポルックスと接近最接近8日ごろ
6月16日 細い月(月齢3)と接近
›› 解説
プレセペ星団も近い
6月中旬 プレセペ星団と大接近
›› 解説
最接近20日ごろ
7月上旬 レグルスと大接近
›› 解説
最接近10日ごろ
7月16日 細い月(月齢3)と接近
›› 解説
8月14日 細い月(月齢3)と並ぶ
8月18日 東方最大離角(›› 解説
9月上旬 スピカと大接近
›› 解説
最接近1日ごろ
9月21日 最大光度-4.6等級
10月25日 内合(›› 解説黄道座標系では26日

星図(7月16日 細い月と金星が接近)

7月16日の細い月との接近など、金星は月や1等星などと様々な接近現象を見せたステラナビゲータで星図作成)。

金星は10月下旬に内合(›› 解説)となり、太陽と同じ方向に位置するので見えなくなります。その後は11月上旬ごろから、明け方の東天に「明けの明星」として見えるようになります。明けの明星となって以降の接近現象については「現象ガイド」のページで順次ご紹介します。

他の惑星や天文現象もチェック!

金星以外の惑星にも注目してみましょう。この春から夏にかけては火星木星土星が次々に見ごろを迎え、宵空がとても賑やかになります。とくに7月末に地球と最接近する火星には大注目です。

【特集】火星大接近(2018年7月31日 地球最接近)
【特集】木星とガリレオ衛星(2018年)
【特集】環のある惑星 土星(2018年)

惑星のほかにも月食や流星群など、楽しみな天文現象がいろいろ起こります。「アストロガイド 星空年鑑 2018」ではこうした現象の見どころや季節の星座を、書籍とDVD番組で詳しく紹介。さらに付属の天文シミュレーションソフト「アストロガイドブラウザ」で、現象の見え方や時刻などを調べることもできます。

「アストロガイド 星空年鑑 2018」

モバイルツールでシミュレーション

iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使うと、端末を向けた方向の空を画面にシミュレーション表示するので、金星の位置や周りの星の名前などが簡単にわかります。コンパス連動によって建物の陰になっていても方向がわかるので、街中でも位置の見当をつけることができます。

他の製品は ›› モバイル製品情報

スマートステラでのシミュレーション

7月上旬ごろ、金星がしし座の1等星レグルスと大接近する様子をスマートステラで表示。コンパス連動時には実際の空で見える方向までナビゲーションしてくれる。クリックで画像拡大。

金星に関するマメ知識

灼熱の惑星

太陽系で地球の1つ内側を公転している金星は、大きさも質量も地球によく似た惑星です。自転周期が243日と非常に長く(惑星のなかで最長)、しかも公転の方向と逆回転に自転している(惑星の中で金星と天王星のみ)という、不思議な特徴があります。

金星は二酸化炭素を主成分とする厚い大気を持ち、地表付近の大気圧が90気圧にも達します。また、温室効果で地表の温度は約470℃にもなります。

この高温高圧に加えて、金星では二酸化硫黄の雲から硫酸の雨が降っており、上空には時速400kmと自転の60倍も速い暴風(「スーパーローテーション」)が吹いています。金星は、ローマ神話の美の女神「ウェヌス(ヴィーナス)」の名を冠した惑星とは思えないほどの過酷な環境が広がっているのです。

金星探査機「あかつき」

2010年に打ち上げられた日本の探査機「あかつき」は、2015年12月から金星の周回探査をしています。6種類のカメラで大気や雲の動き、温度などを観測し、金星の素顔を解き明かそうとしています。

「星ナビ」2016年6月号「暁のヴィーナス」

月刊「星ナビ」2016年6月号の「あかつき」特集

「あかつき」が撮影した金星

2015年12月に「あかつき」が撮影した、4つのカメラによる金星の擬似カラー画像(出典:JAXA)。

太陽系内の動き

金星は太陽系の中で地球よりも内側を公転する内惑星で、225日で太陽の周りを一周します。地球より内側なので、地球の夜側(太陽の反対方向)に見えることはなく、必ず夕方の西の空(宵の明星)か明け方の東の空(明けの明星)に見えます。

とくに、見かけ上太陽から最も離れるころには、日の入り後や日の出前の地平線からの高度が高くなり見やすくなります。金星が太陽から東に最も離れるときを「東方最大離角」といい、「日の入りのころに夕方の西の空」で見やすくなります(東と西を間違えないように注意)。反対に太陽から西に最も離れるときは「西方最大離角」で、「日の出のころに明け方の東の空」で見やすくなります。最大離角のころに金星を天体望遠鏡で観察すると、半月状に見えます。

また、地球から見て金星が太陽と同じ方向になる状態が「合」で、太陽の向こう側にあるときを「外合」、手前(太陽と地球の間)にあるときを「内合」といいます。内合の前後の金星は地球に近いので直径が大きくなり、さらに非常に細くなります(見かけ上太陽に近いので、観察にはじゅうぶん注意しましょう)。

内合の特殊な状態が、金星が太陽面と重なって見える「太陽面通過」です。前回は2012年6月に起こりました。次回は2117年まで起こりません。

2018年3月から10月までの、太陽系内の地球と金星の動き(ステラナビゲータでシミュレーション)。