2018年の土星は7月〜10月ごろに観察シーズンを迎えます。やや低めですが、0等級と明るいので街中でも肉眼で見つけられます。空が暗いところなら、天の川の中で土星が輝いているのがわかるでしょう。
ここ数年は土星の北側が地球のほうに大きく傾いているので、環が開いて見やすくなっています。天体望遠鏡で観察してみましょう。衛星タイタンも見えるかもしれません。
2018年5月から12月ごろまでに起こる、土星と月との接近などは、以下のとおりです。月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
5月 5日 | 月(月齢19)と大接近 (›› 解説) | 未明から明け方 |
5月31日 〜 6月 1日 |
月(月齢16)と接近 (›› 解説) | 深夜から明け方 |
5月 〜6月上旬 |
いて座の球状星団 M22と大接近 | 最接近5月15日ごろ |
6月27日 | 衝(しょう) (›› 解説) | 太陽の正反対に来る (深夜に南に見える) |
6月28日 〜29日 |
月(月齢15)と接近 (›› 解説) | 夕方から未明 |
7月25日 〜26日 |
月(月齢12)と接近 (›› 解説) | 夕方から未明 |
8月下旬 〜9月中旬 |
いて座の散光星雲 M8、M20と大接近 | 最接近9月6日ごろ |
8月21日 〜22日 |
月(月齢10)と大接近 (›› 解説) | 夕方から未明 |
9月 6日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる |
9月17日 | 月(月齢8)と接近 (›› 解説) | 夕方から宵 |
9月26日 | 東矩(とうく) | 太陽から90度東に離れる (日没のころ南に見える) |
10月15日 | 月(月齢6)と接近 (›› 解説) | 夕方から宵 |
11月11日 | 細い月(月齢4)と接近 (›› 解説) | 夕方から宵 |
12月 9日 | 細い月(月齢2)と大接近 (›› 解説) | 夕方 |
土星は、12月中旬は太陽に近づいて見えにくくなり、来年1月上旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。その後は来年3月中旬ごろから、明け方の南東の空に見えるようになります。
土星以外の惑星にも注目してみましょう。金星が宵の明星として夕方の西の空に見えるほか、火星や木星も夏ごろに見やすくなり、宵空がとても賑やかになります。とくに7月末に地球と最接近する火星には大注目です。
惑星のほかにも月食や流星群など、楽しみな天文現象がいろいろ起こります。「アストロガイド 星空年鑑 2018」ではこうした現象の見どころや季節の星座を、書籍とDVD番組で詳しく紹介。さらに付属の天文シミュレーションソフト「アストロガイドブラウザ」で、現象の見え方や時刻などを調べることもできます。
iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使うと、端末を向けた方向の空を画面にシミュレーション表示するので、土星のある方向や周りの星、星座の名前が簡単にわかります。日時を変化させて月との接近をシミュレーションすることもできます。
他の製品は ›› モバイル製品情報
土星の環を見るためには天体望遠鏡が必要ですが、それほど大口径のものや高い倍率でなくても大丈夫です。双眼鏡でも、手振れを抑えれば「真ん丸ではなく、何となく楕円っぽく見える」ことはわかるでしょう。手持ちの道具があれば、まずそれを土星に向けてみてください。
公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で土星を見ることができ、環の中にある「カッシーニの間隙」と呼ばれる隙間や、8等級の衛星「タイタン」も見えてきます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」などで検索してみてください。
土星は地球と同様に傾いた状態で公転しているため、土星の赤道面に沿って広がっている環の見え方(見かけ上の太さ)は、年々変化します。昨年2017年5月に土星の北半球が夏至を迎え、土星の北側が最も地球(太陽)の方向に傾いたため、環も太く見えるようになりました。今年も引き続き、環が太く見える状態です。
今後は環が少しずつ細く見えるようになっていき、2025年には地球や太陽から見て環が真横を向くような位置関係となるために、見かけ上土星の環が消えてしまう「環の消失」が起こります。さらにその後は土星の南半球が見やすくなるのに伴って再び環が太くなっていき、2032年には反対の南側の面が一番広く見えるようになります。
天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、土星の環の見え方や衛星タイタンの位置などを正確にシミュレーションできます。観測や撮影に便利です。
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡などを多数取り扱っています。環を自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズや、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
天文雑誌「星ナビ」で火星、木星、土星の見どころや撮り方を特集しています。
土星には60個以上の衛星が見つかっています。そのうちとくに興味深いのは、タイタンとエンケラドスです。
タイタンは土星最大の衛星で、窒素を主成分とする厚い大気を持っています。メタンの雨が降り、表面に液体のメタンやエタンの川や湖が存在しています。
エンケラドスでは、地下から水蒸気が間欠泉のように噴き出している現象がとらえられており、地下に液体の水が存在すると考えられています。
ほかにも、巨大なクレーターを持つミマス、表面の色がきれいに二分されているイアペタス、環を安定させる役割を果たす羊飼い衛星のプロメテウス、パンドラなど、面白い衛星が多数あります。
土星探査機「カッシーニ」は2004年から2017年までの13年間、土星の大気や模様、環の構造、衛星の特徴などを詳しく調べました。前述したタイタンやエンケラドスに関する発見など科学的な成果だけでなく、数々の美しい画像も私たちに届けてくれました。多数の衛星が環や本体の細かい模様と共に写し出されるのは、土星の近くを飛び回る探査機の視点ならではです。