2020年の土星は7月~10月ごろに観察シーズンを迎えます。やや高度が低いものの0等級と明るいのでよく目立ち、街中でも簡単に見つけられます。天体望遠鏡で観察すると、環や衛星タイタンが見えるでしょう。
今シーズンの土星は木星と並んでいて、12月中旬~下旬に「超大接近」が起こります。また9月ごろからは火星も見やすくなり、3惑星の観察が楽しめそうです。
目次
土星を見つけよう
明るい黄白色の星
土星の明るさは約0等級で、街中でも肉眼で簡単に見つけられます。「南の空のやや低いところに見える、クリーム色の明るい星」と覚えておけばわかりやすいでしょう。
2020年の土星は「いて座」と「やぎ座」の境界付近にあり、夏から初秋に宵空で見やすくなります。今年は同じ時期に木星も見ごろを迎えています。木星は土星より明るく、土星の西(南を正面として右側)にあります。空の条件が良ければ、土星と木星の西に天の川も見えるでしょう。
土星に関する現象カレンダー:
月と共演/年末に木星と超大接近
2020年5~12月ごろに起こる、土星と月との接近などは、以下のとおりです。このうち月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
4月26日 | 西矩(せいく) | 太陽から90度西に離れる(日の出のころ南に見える) 黄道座標系では21日 |
5月11日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる |
5月13日 | 月(月齢20)、木星と接近 (›› 解説) | 未明~明け方 |
4月下旬 ~6月上旬 |
木星と接近 (›› 解説) | 深夜~明け方 最接近5月18日ごろ(間隔の変化のグラフ) |
6月 9日 | 月(月齢17)、木星と並ぶ (›› 解説) | 未明~明け方 |
7月 6日 | 月(月齢15)と接近、 木星と並ぶ (›› 解説) | 宵~明け方 |
7月21日 | 衝(しょう) (›› 解説) | 太陽の反対に来る(深夜に南に見える) |
8月 2日 | 月(月齢13)と接近 (›› 解説) | 夕方~未明 |
8月29日 | 月(月齢11)と接近 (›› 解説) | 夕方~未明 |
9月25日 | 月(月齢8)と並ぶ | 夕方~深夜 |
9月29日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる |
10月23日 | 東矩(とうく) | 太陽から90度東に離れる(日の入りのころ南に見える) 黄道座標系では18日 |
10月23日 | 月(月齢7)と接近、 木星と並ぶ (›› 解説) | 夕方~宵 |
11月19日 | 細い月(月齢4)と並び、 木星と接近 (›› 解説) | 夕方~宵 |
12月17日 | 細い月(月齢3)と接近、 木星と大接近 (›› 解説) | 夕方~宵 |
11月上旬 ~12月下旬 |
木星と大接近 (›› 解説) | 夕方~宵 最接近12月21日ごろ(間隔の変化のグラフ) 離角約0.1° |
土星は12月中旬以降、太陽に近づいて見えにくくなりますが、12月中旬~下旬に夕方の西の低空で木星と超大接近します。次に同程度(間隔が1度未満)の接近が起こるのは約60年後となる非常に珍しい現象なので見逃せません。
さらにその後は来年1月下旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。明け方の南東の空に見えるようになるのは来年3月中旬ごろからです。
モバイルツールでシミュレーション
iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使うと、端末を向けた方向の空を画面にシミュレーション表示するので、土星のある方向や周りの星、星座の名前が簡単にわかります。日時を変化させて月や木星との接近をシミュレーションすることもできます。
望遠鏡で環を見よう
土星の環を見るためには天体望遠鏡が必要ですが、それほど大口径のものや高い倍率でなくても大丈夫です。双眼鏡でも、手振れを抑えれば「真ん丸ではなく、何となく楕円っぽく見える」ことはわかるでしょう。手持ちの道具があれば、まずそれを土星に向けてみてください。
公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で土星を見ることができ、環の中にある「カッシーニの間隙」と呼ばれる隙間や、8等級の衛星「タイタン」も見えてきます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」で検索してみてください。
変化する環の見え方
土星は地球と同様に傾いた状態で公転しているため、土星の赤道面上に広がっている環の見え方(見かけ上の太さ)は、年々変化します。2017年5月に土星の北半球が夏至を迎え、土星の北側が最も地球(太陽)の方向に傾いたため、環も太く見えるようになりました。
それから3年が経過した今年は、環の見え方がやや細くなってきています。2025年には地球や太陽から見て環が真横を向くような位置関係となるために、見かけ上土星の環が消えてしまう「環の消失」が起こります。さらにその後は土星の南半球が見やすくなるのに伴って再び環が太くなっていき、2032年には反対の南側の面が一番広く見えるようになります。
土星を撮影してみよう
カラーCMOSカメラを天体望遠鏡に接続して惑星を動画撮影し、その中から写りの良いフレームだけを選んで多数枚コンポジットすると、精緻で滑らかな惑星像を得ることができます。天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、動画からのコンポジットはもちろん、カラーバランス調整やディテール強調まで簡単かつ詳細に行えます。画像を「作品」に仕上げてみましょう。
オンラインショップ
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡などを多数取り扱っています。環を自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズ、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
土星に関するマメ知識
衛星
土星には80個以上の衛星が見つかっていて、太陽系の惑星で最多です(2020年5月時点)。そのうちとくに興味深いのは、タイタンとエンケラドスです。
探査機カッシーニ
土星探査機「カッシーニ」は2004年から2017年までの13年間、土星の大気や模様、環の構造、衛星の特徴などを詳しく調べました。前述したタイタンやエンケラドスに関する発見など科学的な成果だけでなく、数々の美しい画像も私たちに届けてくれました。多数の衛星が環や本体の細かい模様と共に写し出されるのは、土星の近くを飛び回る探査機の視点ならではです。