2024年の8月ごろから2025年の3月ごろまで、宵の明星の金星が夕方の西の空に輝きます。12月から2月ごろは高度が上がり、寒空の中でよく目立ちます。
時おり細い月と並ぶ光景は、とくに美しい眺めです。また、1月中旬に土星と接近する現象も見ものです。肉眼や双眼鏡で観望したり、写真に撮ったりしてみましょう。
目次
金星を見つけよう
宵の明星
2024年の夏から2025年の春、金星は「宵の明星」として見えます。夕方から宵のころに西の空でひときわ明るく輝いているので、一目でそれとわかります。
見やすい時期は、日の入り45分後の高度が10度より高くなる10月下旬から3月上旬まででしょう。最も高くなるのは1月下旬で、日の入り45分後の高度は約35度になります(データはすべて東京の場合)。
形が変わる金星
地球・金星・太陽の位置関係により、金星は月のように大きく満ち欠けして見えます。また、月と異なり、金星は見かけの直径も大きく変化します。形や大きさの変化は肉眼ではわかりませんが、倍率が高めの双眼鏡や天体望遠鏡で見るとよくわかります。天体観察会などに参加して、欠けた姿をぜひ観察してみてください。
金星に関する現象カレンダー:
細い月と共演/土星や1等星と接近
およそ1か月に1回くらいの頻度で、金星と細い月が並んで見えることがあります。金星の輝きはそれだけでも美しいものですが、地球照(地球で反射した太陽光に照らされ、月の暗い側がうっすら見える現象)を伴った幻想的な細い月と金星が夕空に並ぶ光景は、さらに見事な眺めとなります。金星と月の接近は肉眼でもよく見えますが、双眼鏡があるといっそう美しさが際立って感じられることでしょう。
また、金星と土星(1月中旬~下旬)や1等星などとの接近も起こります。最接近のタイミングだけでなく、その前後の日で並び方が変化していく様子も楽しみです。
地上風景も入れた写真撮影にも、ぜひ挑戦してみてください。空の色や雲の形、街明かりの様子は刻一刻と変わっていきます。シャッターチャンスを逃さず、共演を記録してみましょう。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
12月上旬 | 準惑星ケレスと接近 | 未明~明け方 最接近7日ごろ 約13等級差 |
12月下旬 ~1月上旬 |
やぎ座の3等星デネブアルゲディと大接近 | 夕方~宵 最接近12月28日ごろ |
1月 3日 | 細い月(月齢3/4)と接近 | 夕方~宵 |
1月 4日 | 細い月(月齢4)とやや離れて並ぶ | 夕方~宵 |
1月10日 | 東方最大離角 | 47.2° |
1月中旬 ~下旬 |
土星と接近 | 夕方~宵 最接近18日ごろ |
1月下旬 ~2月上旬 |
海王星と接近 | 夕方~宵 最接近2月1日ごろ 約13等級差 |
2月 1日 | 細い月(月齢3)とやや離れて並ぶ | 夕方~宵 |
2月 2日 | 細い月(月齢4)と並ぶ | 夕方~宵 |
2月15日 | 最大光度 | -4.9等級 |
2月28日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる |
3月 2日 | 細い月(月齢2)と並ぶ | 夕方~宵 |
3月上旬 ~中旬 |
水星と並ぶ | 夕方 最接近12日ごろ |
3月21日 | 内合 | 太陽と同じ方向(地球と太陽の間)になる(見えない) 日付は赤道座標系(黄道座標系では23日) |
(過去の現象) | ||
6月 4日 | 外合 | 太陽と同じ方向(太陽の向こう側)になる(見えない) 日付は赤道座標系(黄道座標系では5日) |
8月上旬 | しし座の1等星レグルスと大接近 (» 解説) | 夕方 最接近5日ごろ |
8月 6日 | 細い月(月齢2)と接近 | 夕方 |
9月 5日 | 細い月(月齢2)と大接近 (» 解説) | 夕方 南大西洋などで金星食(日本時間19時ごろ) |
9月中旬 ~下旬 |
おとめ座の1等星スピカと接近 (» 解説) | 夕方 最接近18日ごろ |
10月 5日 | 細い月(月齢3)と並ぶ | 夕方 |
10月 6日 | 細い月(月齢4)とやや離れて並ぶ | 夕方 |
10月中旬 ~下旬 |
さそり座の2等星ジュバと大接近 | 夕方 最接近20日ごろ |
10月下旬 | さそり座の1等星アンタレスと接近 (» 解説) | 夕方 最接近26日ごろ |
11月 4日 | 細い月(月齢3)とやや離れて並ぶ | 夕方 |
11月 5日 | 細い月(月齢4)と並ぶ (» 解説) | 夕方~宵 |
11月中旬 ~下旬 |
いて座の3等星カウスボレアリスと超大接近 | 夕方~宵 最接近17日ごろ |
11月中旬 ~下旬 |
いて座の3等星いて座φと大接近 | 夕方~宵 最接近20日ごろ |
11月中旬 ~下旬 |
いて座の2等星ヌンキと大接近 | 夕方~宵 最接近22日ごろ |
12月 4日 | 細い月(月齢3)とやや離れて並ぶ | 夕方~宵 |
12月 5日 | 細い月(月齢4)と接近 (» 解説) | 夕方~宵 |
金星は3月下旬に内合(» 解説)となり、太陽と同じ方向に位置するので見えなくなります。その後は4月上旬ごろから、明け方の東天に「明けの明星」として見えるようになります。
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金星に関するマメ知識
灼熱の惑星
太陽系で地球の1つ内側を公転している金星は、大きさも質量も地球によく似た惑星です。自転周期が243日と非常に長く(惑星のなかで最長)、しかも公転の方向と逆回転に自転している(惑星の中で金星と天王星のみ)という、不思議な特徴があります。
金星は二酸化炭素を主成分とする厚い大気を持ち、地表付近の大気圧が90気圧にも達します。また、温室効果で地表の温度は約470℃にもなります。
この高温高圧に加えて、金星では二酸化硫黄の雲から硫酸の雨が降っており、上空には時速400kmと自転の60倍も速い暴風(「スーパーローテーション」)が吹いています。金星は、ローマ神話の美の女神「ウェヌス(ヴィーナス)」の名を冠した惑星とは思えないほどの過酷な環境が広がっているのです。
金星探査
2010年に打ち上げられた日本の探査機「あかつき」は、2015年12月から金星を周回探査しました。6種類のカメラで大気や雲の動き、温度などを観測し、様々な画期的な研究成果を挙げました。
- JAXA:金星探査機「あかつき」(PLANET-C)
- ISAS:金星探査機「あかつき」PLANET-C
2021年6月には、NASAの「ダビンチ+」と「ベリタス」、ヨーロッパ宇宙機関の「エンビジョン」という次期の金星探査計画が相次いで発表されました。今後の研究の進展が楽しみです。
太陽系内の動き
金星は太陽系の中で地球よりも内側を公転する内惑星で、225日で太陽の周りを一周します。地球より内側なので、地球の夜側(太陽の反対方向)に見えることはなく、必ず夕方の西の空(宵の明星)か明け方の東の空(明けの明星)に見えます。
とくに、見かけ上太陽から最も離れるころには、日の入り後や日の出前の地平線からの高度が高くなり見やすくなります。金星が太陽から東に最も離れるときを「東方最大離角」といい、「日の入りのころに夕方の西の空」で見やすくなります(東方~ですが西に見えます)。反対に太陽から西に最も離れるときは「西方最大離角」で、「日の出のころに明け方の東の空」で見やすくなります。最大離角のころに金星を天体望遠鏡で観察すると、半月状に見えます。
また、地球から見て金星が太陽と同じ方向になる状態が「合」で、太陽の向こう側にあるときを「外合」、手前(太陽と地球の間)にあるときを「内合」といいます。内合の前後の金星は地球に近いので直径が大きくなり、さらに非常に細くなります(見かけ上太陽に近いので、観察にはじゅうぶん注意しましょう)。