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パンスターズ彗星(C/2011 L4)

2011年6月に発見されたパンスターズ彗星(C/2011 L4)が、2013年3月〜5月ごろ日本の空に現れます。双眼鏡で長期間にわたって楽しめそうです。

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最新情報(6/12更新)

※更新は終了しました。

明るさなど最新動向

5月31日〜6月8日のパンスターズ彗星

5月31日〜6月8日のパンスターズ彗星。画像クリックで投稿ギャラリーページへ(撮影:Blackwood_22さん。福島県東白川郡にて)

5月下旬に北極星のそばを通過し、明るさは9〜10等級まで暗くなっています。北天のこぐま座を西の空へ移動中で、ひと晩中見やすい位置にあります。

軌道面通過前後には望遠レンズで撮影すると、直線状に長く延びた見事なアンチテイルが写り、天文ファンを長く楽しませてくれています。

|| 明るさ予想グラフ ||

点が実際に観測された明るさ(ICQ/MPCなどの報告より)、曲線がそれに基づく今後の予測(図をクリックで拡大)。彗星はぼんやりと広がった姿をしているので、同じ等級の恒星よりも暗く見えることに注意。

トピックアーカイブ(5/27追加)

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彗星を見るには

いつが見ごろ?

|| 3月中旬〜下旬 ||(予測:2〜4等級)

彗星自体の明るさがピークになるのは3月10日の太陽最接近直後と予想されます。彗星は一般的に、太陽に近づくと熱でガスや塵を活発に放出して明るさを増すためです。ただし、日の入り直後、明るさが残る西の空のかなり低いところに位置するため、肉眼で見つけるのは難しく、双眼鏡が必要でしょう。

|| 3月終わりごろから4月にかけて ||(5〜6等級)

日の入り後の西の空と日の出前の東の空で、暗い時間帯でも3月より高いところに位置し、探しやすくなります。一方で、太陽や地球から離れていく分暗くなっていきます。

|| 4月終わりごろから5月にかけて ||(7〜8等級)

一晩中北の空で見やすい位置ですが、天体望遠鏡が必要な明るさになるでしょう。

彗星の明るさ予想は日々変わります。最新情報は「明るさなど最新動向」コーナーで。一方、位置や軌道については正確に予測されています。「3月〜5月の彗星の位置」コーナーへ。

見えやすい条件

  • 明かりが少なく、空気が澄んでいる日時・場所
    (月明かり、街明かり、黄砂などを考慮)
  • 彗星が低い位置のときは、よくひらけた場所
  • 車が通らない、また治安のうえでも安全な場所
    近くの科学館などでの観望会がおすすめです(参照→パオナビ:パンスターズ彗星イベント情報

実際の空で彗星を探す

星図から探すときは、腕や指を使って角度の目安にすると便利です。

体を使った角度のめやす

iPhone/iPad用無料アプリ「パンスターズ彗星を見よう」を使うと、実際の空で彗星が見える方向がその場でわかります。総合天文アプリ「iステラ」(iPhone/iPod touch用)、「iステラ HD」(iPad用)、「スマートステラ」(Android用)も彗星表示に対応。

(※)機能と対応機種については各製品ページでご確認ください。

飛行機雲の例

左は、彗星と間違えやすい飛行機雲の例です。位置や尾の向きが正確か、他の明るい恒星も見える条件か、数分で大きく動いたり形が変わったりしないかなど確かめてみましょう。

彗星を観る

彗星はぼんやりと広がった姿をしているので、同じ明るさ(等級)の恒星よりも暗く見えます。双眼鏡を使うと肉眼よりも暗い天体まで見えるので、見つけやすくなります。また、天体望遠鏡よりも視野(見える範囲)が広いので、目印になる周りの星と見比べながら彗星を探すことができます。観察の際には、手ブレを防止するために、三脚に取り付けるとよいでしょう。

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彗星を撮る

彗星の撮影にもチャレンジしてみましょう。カメラでは目で見るよりも暗い天体まで写せるので、眼視では見えなくても撮影した画像を拡大するととらえられていることがあります。おおよそ彗星の方向にカメラを向け、露出時間を長めに固定撮影します。

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3月〜5月の彗星の位置

「彗星が現れる時刻と方向」では実際に空の中で見える位置、「恒星を背景にした動き」では、星座を基準にした動きを表示します(各画像をクリックで拡大)。

彗星が現れる時刻と方向

2013年3月(東京)のパンスターズ彗星の位置

3月10日の近日点通過後、日没後の西の空に現れる。高度が低いので、西の空がひらけたところで双眼鏡で探してみよう。

2013年4月(東京)のパンスターズ彗星の位置

だんだん北に移動して、4月には見やすい位置に。日没後の西の空と日の出前の東の空に現れ、やがて一晩中北の空を回る。

2013年5月(東京)のパンスターズ彗星の位置

5月には太陽からは遠ざかり暗くなっているはずだが、位置としては北極星に近づき、さらに見やすく探しやすい。

「iステラ」でパンスターズ彗星を表示
〜アンドロメダ大銀河との接近を見よう〜

アンドロメダ座大銀河との接近

  1. 設定ボタン[…]→「場所設定」で、観測場所を設定します(GPSで取得可能)。
  2. 設定ボタン[…]→「データ更新」で、彗星の最新データをオンラインで取得します。
  3. 星図設定ボタン[★]→「彗星」「星雲・星団(メシエ)天体」からそれぞれの表示をオン。
  4. 日時を2013/4/5 19:00ごろに設定します。
  5. ドラッグして北西の空を表示すると、アンドロメダ大銀河にパンスターズ彗星が接近している様子が見られます。

恒星を背景にした動き

2013年3月(東京)のパンスターズ彗星の位置

3月10日に近日点を通過。3月13日には天王星、細い月も近くに見える。

2013年4月(東京)のパンスターズ彗星の位置

4月5日には、アンドロメダ大銀河(M31)と接近。中旬にはカシオペヤ座を通過する。

2013年5月(東京)のパンスターズ彗星の位置

5月には北極星に近づく。

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月や銀河とランデブー

月や銀河、おなじみの星座のそばを通過するときは、彗星が見つけやすく、また2ショットを狙うチャンス(各画像をクリックで拡大)。

3月13日 細い月と接近

3月13日 細い月と接近

月齢2の細い月のすぐそばにやってきます。双眼鏡と同じ視野に見えるので、月を目印に探せます。さらに、左下に6等の天王星が見えるかもしれません。

4月上旬 アンドロメダ座大銀河(M31)と接近

4月4日夕方 アンドロメダ座大銀河(M31)と接近 4月5日明け方 アンドロメダ座大銀河(M31)と接近

4月上旬には、日没後の西の空と日の出前の東の空でアンドロメダ座大銀河(M31)と接近。4月4日〜5日に最も近づきます。

4月中旬 カシオペヤ座を通過

4月中旬日の出前 カシオペヤ座を通過 4月中旬日の入り後 カシオペヤ座を通過

最も見つけやすくおなじみの星座の1つ、カシオペヤ座を目印に彗星を探してみましょう。

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パンスターズ彗星について

彗星についての基本を知るには、「これだけは覚えておきたい天文の基礎知識 7.彗星」へ。

「星ナビ」2013年3月号「今月の視天」(執筆:吉田誠一さん)からの抜粋記事です。

「パンスターズ計画」で発見

パンスターズ彗星は、自動サーベイシステムのひとつ、パンスターズ(Panoramic Survey Telescope And Rapid Response System)計画で発見された新彗星だ。このパンスターズ計画は、ハワイ・ハレアカラにある口径1.8mの大型望遠鏡「パンスターズ1」を使って行われている。わずか数日で全天をカバーし、24等級の天体まで写し出せるパンスターズ計画は、最強クラスの自動サーベイだ。他の捜索者の網には引っかからないような、遠方にある暗い彗星を誰よりも早く発見できる。2010年10月に最初の新彗星を発見したばかりだが、その後の活躍は目ざましく、すでに28個もの新彗星を発見し、いずれも「パンスターズ彗星」の名前が付けられている。

3月10日に太陽に最接近するパンスターズ彗星(C/2011 L4)

パンスターズ彗星の軌道

パンスターズ彗星の軌道傾斜角は84.2度と急で、太陽に最も近づく時の距離は水星軌道とほぼ同じ0.3au。クリックで拡大。

今回明るくなると期待されているのは、その中の「C/2011 L4」という符号を持つパンスターズ彗星だ。この彗星は、2011年6月6日に19.4等級という暗さで発見された。これほど暗いのは発見当時は太陽から8auも離れていたためで、彗星そのものは大型だ。そして軌道が計算されると、2013年3月に太陽に0.3天文単位まで接近し、明るくなることがわかったのだ。

発見当初の予報では、最大で0等級から1等級の明るさになると計算されていた。これでも充分に明るい彗星といえるが、その後予報をさらに上回る速いペースで増光し、期待を高めた。2012年秋の時点で、当初の予報を1.5等級ほど上回っており、最大でマイナス1等級の大彗星になると期待された。

そしていよいよ、パンスターズ彗星が近日点を通過する3月10日が、目前に迫ってきた。

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「星ナビ」ピックアップ

月刊「星ナビ」2013年6月号の記事(執筆:吉田誠一さん)を特別掲載。

暗い夜空で輝く大彗星の貫禄 (5月1日更新)

2013年前半の天文界の話題をさらったパンスターズ彗星も、3月10日に近日点を通過し、あとは遠ざかるのみとなった。だが最盛期から2か月が過ぎても、双眼鏡を使えばまだまだじゅうぶんに楽しめる明るさだ。去りゆく彗星の姿を、ぜひ最後まで見届けてみよう。

3月半ばには約1等級まで明るくなり、夕方の薄明の中に輝く姿を見せてくれたパンスターズ彗星。都会でも観察できたが、太陽から遠ざかるにつれて次第に暗くなってきた。春分の日を過ぎると2等級を下回り、低空では見ることが難しくなった。3月下旬には、夕方・明け方ともに地平線すれすれになってしまった。この時期は世界的にも観測が少なくなったが、特に異変が起こることもなく予報どおりに暗くなっていった。

4月に入ると明け方の北東の空に現れ、しだいに高く見えるようになってきた。アンドロメダ座大銀河とランデブーするとあって、この時期を待っていた人は多いだろう。パンスターズ彗星は、予報どおり4〜5等の明るさでアンドロメダ座大銀河の横を通り過ぎ、絶好のシャッターチャンスとなった。

最盛期の光度と比べると10分の1以下まで暗くなっていたが、暗い夜空で見る幅広いダストの尾を伸ばした立派な姿は、3月と比べても見劣りはしなかった。観測条件が良くなったため、尾の長さは最盛期とほぼ変わらず、眼視では満月の直径ほど、写真では数度ほどに伸びて見えた。もともと太陽に最接近するかなり前から豊富なダストを放出していたので、幅広く格好の良い尾を見ることができた。

今後もほぼ予報どおりに暗くなっていくだろう。それでも、本誌が発売される5月上旬にはまだ7等級の明るさで、双眼鏡であればじゅうぶんに見える。北の空を一晩中めぐる周極星となり、自分の好きな時間に見られるのも好都合だ。

5月下旬には8等級になるが、5月27日には地球がパンスターズ彗星の軌道面を通過する。この時、彗星の軌道面に広がったダストの平面を真横から見ることになり、尾が細く収束して見やすくなる。しばらくは尾を伸ばした彗星らしい姿を楽しめるだろう。

その後も、日本からはずっとパンスターズ彗星を観測できる。6月には9等級、7月には10等級、8月には11等級としだいに暗くなっていくが、太陽系の彼方に去るまで、専門家たちはこれから何年もその姿を追い続けるだろう。われわれも、できるだけ長くパンスターズ彗星との時間を楽しみたいものだ。

星ナビ2013年6月号(5月2日発売)
「パンスターズ彗星」特集でもっと詳しく

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