地球に落下した小惑星2018 LAの破片を回収
【2018年7月13日 ヘルシンキ大学】
6月2日、地球に接近する天体を監視する米・アリゾナ大学のカタリナ・スカイ・サーベイによって小惑星2018 LAが発見され、地球に衝突することが判明した。2018 LAは発見の8時間後に地球の大気圏に突入して火球となり、アフリカ南部のボツワナ上空で爆発を起こした。落下の様子はボツワナや近隣の国々で多くの人に目撃され、たくさんの防犯カメラにも映像が記録された(参照:「直径2mの小惑星がアフリカ南部に落下」)。
爆発・分裂した2018 LAの破片は落下中に受けた向かい風で広い範囲に散らばった。米・SETI研究所のPeter Jenniskensさんを中心とするグループと、フィンランド火球ネットワーク(FFN)のEsko LyytinenさんとJarmo Moilanenさんがそれぞれ独立に計算を行い、破片の落下地域を割り出した。ボツワナを訪れたJenniskensさんは、ボツワナ大学オカバンゴ研究所(ORI)のOliver Mosesさんと協力して、同国中央部のラコプス(Rakops)村と北部の町マウン(Maun)で防犯カメラの映像を集め、火球が爆発した位置と高度を絞り込んだ。これによって、落下地域はボツワナの中央カラハリ野性動物保護区の中の約200km2の範囲にあることがわかった。
落下地域が絞り込まれたのを受け、現地では破片の捜索チームが組織された。捜索に参加したのはボツワナ国際科学技術大学(BIUST)やボツワナ地球科学研究所、ORIの地球科学の研究者たちだ。また、ボツワナ政府の野生生物・国立公園局によって同保護区への立ち入りが許可され、護衛と隕石捜索のために国立公園のレンジャーもチームに参加した。
捜索地域となった同保護区は背の高い雑草やトゲのある灌木などが生い茂る原野で、象やライオンが生息している。捜索チームはこの地域を徒歩で5日間捜索し、捜索開始から5日目の6月23日にBIUSTのLesedi Seitshiroさんがついに隕石を発見した。
今回の隕石の発見には2つの意味がある。一つは落下直後の隕石そのものに非常に高い科学的価値があるという点で、もう一つは衝突する小惑星から地球を守る「地球防衛」の精度を向上させることに役立つという点だ。2018 LAは地球に衝突する前に発見することができた観測史上3つ目の小惑星で、そうした天体の破片が回収されたのはこれが史上2度目だ。
今回発見された隕石はボツワナの法律に基づいて保護され、ボツワナ国立博物館の管理となる。今後はボツワナ地球科学研究所が組織する研究チームによって詳しく調べられる予定だ。一方、隕石片の捜索はBIUSTのFulvio Franchiさんやヘルシンキ大学・FFNのTomas Kohoutさんらのチームによって今後も続けられる。
〈参照〉
- University of Helsinki:Fragment of impacting asteroid recovered in Botswana
- SETI Institute:Fragment of Impacting Asteroid Recovered In Botswana
〈関連リンク〉
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