明るいクエーサーに隠されていた銀河団
【2018年8月22日 マサチューセッツ工科大学】
米・MITカブリ物理学宇宙研究所のTaweewat Somboonpanyakulさん、Michael McDonaldさんたちの研究チームが、隠れた銀河団を探し出すサーベイ研究「CHiPS」から、これまで知られていなかった銀河団をケンタウルス座の方向に発見した。
この方向には約24億光年彼方に、「PKS 1353-341」という非常に明るく輝くクエーサー(銀河の中心に存在する活動的な超大質量ブラックホール)が存在している。このクエーサー自体は数十年前に見つかっていたが、今回の研究までは、周囲に天体が少ない宇宙空間で孤立して存在するクエーサーだと考えられていた。Somboonpanyakulさんたちの研究により、PKS 1353-341は銀河団の中心に位置する天体であり、その光があまりに強いために周囲の銀河が見えていなかったことが明らかになった。銀河団には数百個の銀河が含まれており、銀河団の質量は太陽690兆個分に相当する。
計算によると、PKS 1353-341の明るさは太陽の460億倍にも達する。これほど明るいのは、クエーサーを取り巻く物質の円盤からブラックホールへと大きな物質の塊が落ち込むことでエネルギーが放射されているためだと考えられている。「PKS 1353-341は銀河団の中心に存在する典型的なブラックホールの数千倍も明るいもので、ブラックホールへ非常に激しく物質が落ち込んでいます。この状態がこれまでどのくらい続いてきたか、今後いつまで続くのかはわかりませんが、明るい状態は長続きしないかもしれません。100万年以内にはクエーサーは暗くなるでしょう」(McDonaldさん)。
McDonaldさんたちは2012年に、宇宙で最も大質量で最も明るい銀河団の一つである「フェニックス銀河団」を発見した。これほど明るいものが2012年まで見つかっていなかった理由については、「銀河団をX線で観測すると、一般的には淡く広がって見えます。明るい点源として見えるとは思ってもいなかったので、見逃していたのです」(McDonaldさん)という。
フェニックス銀河団の発見によってMcDonaldさんは、同様に見逃されてきた銀河団が他にも存在するのではないかと考え、CHiPSサーベイを開始した。それが今回の発見につながったのである。
研究チームでは今後も、似たような「明るいクエーサーのために見逃されてきた銀河団」を見つけようとしている。こうした隠れた銀河団は、宇宙の物質の量や宇宙膨張の速さを見積もる上で重要な手がかりとなるかもしれない。
〈参照〉
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