ハッブル宇宙望遠鏡が科学観測を再開
【2018年10月31日 NASA】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)は10月6日(日本時間、以下同)、ジャイロの故障のためセーフモードへ入った。
ジャイロとは、望遠鏡の向きを変え観測ターゲットとなる天体をロックオンするうえで必要となる、望遠鏡の回転速度を計測するための装置だ。これまで3個のジャイロでの運用が行われてきたが、5日にそのうちの1個が故障したため、HSTの運用チームは翌日にバックアップ用のジャイロを稼働させた。しかし、このバックアップのジャイロは正常に動作せず、実際よりもはるかに大きい回転速度の値を返していた。
運用チームは先々週、HSTの姿勢を変えたりジャイロの動作モードを切り替えたりするための様々なコマンドの送信を行い、そのおかげで無事に問題が解消された。その後、ジャイロが安定しているかどうかの確認が行われ、追加的な安全措置がインストールされた。
先週末には、望遠鏡の向きの変更や観測ターゲットのロックオンといった、通常の科学観測を行うのと同様の稼働ができることが確認され、今回の故障に関わるすべての作業が完了した。27日午後にHSTは遠方の星形成銀河「DSF2237B-1-IR」の観測を行い、復旧後初となる科学観測を終えている。
現在HSTは、3つのジャイロで通常の科学観測モードに戻っている。1990年の打ち上げ以来、当初の寿命である15年をはるかに超えて実に28年以上も科学の最前線で貴重な発見をもたらし続けているHSTが、今後も活躍し続けることに期待したい。
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