コンパクトな複数惑星系は低金属量星の周囲にできやすい
【2018年10月31日 イェール大学】
米・イェール大学のJohn Michael Brewerさんたちの研究チームの研究成果によると、複数の惑星を持つ小さな惑星系は「ヘビーメタル」のファンではなさそうだ。ヘビーメタルとはこの場合、音楽のジャンルではなく、ヘリウムより重いすべての元素(天文学では「重元素」や「金属」と呼ぶ)のことを指す。酸素やケイ素、鉄など、地球のような小さい岩石惑星の主成分となる元素だ。
Brewerさんたちは700個の恒星とその周囲の惑星を観測し、複数の惑星からなるコンパクトな惑星系は、太陽よりも金属量(重元素量)が少ない低金属量星の周囲に作られやすいことを見出した。
最近までの系外惑星探しは、大きい惑星に対して重点的に行われてきた。これは、小さい惑星を検出するには観測機器の精度が不十分だったためだ。今後は超精密分光器「EXPRES」などの活躍によって、小さい惑星の発見も可能になる。今回の研究成果と合わせると、コンパクトな複数惑星系はこれまでに想像されていたよりも多く存在しているのかもしれないと考えられる。
また、低金属量星の寿命が長く、こうしたコンパクトな惑星系は最初に作られた惑星系かもしれないとも考えられることから、地球外生命を探すうえで理想的な対象となりうる。
共同研究者であるイェール大学のDebra Fischerさんたちは2005年に、恒星に含まれる重元素が多いほど、その周囲に木星のような巨大ガス惑星が形成される可能性が高くなるという研究成果を発表した。この説は、微惑星同士の衝突合体でできたコアが原始惑星系円盤中のガスを捕獲して木星型惑星が形成されるという「コア集積モデル」を強く支持するもので、惑星形成のメカニズムとして確立されている。しかし、小さい惑星の形成に関する理解は、困難な課題である。
「複数の惑星が存在するコンパクトな系が低金属量星の周囲に形成される可能性が高いという発見は、天の川銀河内でもっとも一般的な惑星系の理解につながる、新しく重要な手がかりを示唆する成果です」(イェール大学 Songhu Wangさん)。
研究チームによると、低金属量星では鉄に対するケイ素の比率が高いことも示されている。惑星の誕生現場における鉄とケイ素の関係を調べると、別の面白いことがわかるかもしれない。「ケイ素は秘密の材料なのかもしれません。鉄に対するケイ素の比率が、温度を調整するためのサーモスタットのような役割を果たし、この比率が上昇すると小さな岩石惑星の形成が増えるようです」(Fischerさん)。
〈参照〉
- YaleNews:Some planetary systems just aren’t into heavy metal
- The Astrophysical Journal Letters:Compact Multi-planet Systems are more Common around Metal-poor Hosts 論文
〈関連リンク〉
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