青空の中で確認できるか?11日朝「こうのとり」7号機が日本上空で大気圏再突入
【2018年11月9日 三島和久さん】
筆者:三島和久さん(倉敷科学センター)
JAXAは11月6日、宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機(HTV-7)が、11月11日(日)午前6時40分前後、日本上空付近で大気圏再突入することを報じた。
スペースシャトルや宇宙ステーション「ミール」など、大型の人工衛星が地上に落下(大気圏再突入)する際には、大規模な火球となって昼間の青空の中でも目撃された実例がある。日の出直後の明るい空の中でHTV-7の火球が確認できるか、にわかに注目が集まっている。
昼間の大気圏再突入はあまり観測された事例がなく、公開されているHTV-7の再突入情報も限定的であるため、足りない要素は過去のHTVやATV(欧州の宇宙ステーション補給機)の再突入実績を元に推測するしかない。あくまでも正確な情報ではないということを念頭に、観測計画を立てる上での参考としてお役立ていただきたい。
大気圏再突入に関する情報を整理すると、おおよそ次のような落下経路になると推測される。
- 午前6時40分前後に日本上空で大気圏再突入する
- 落下海域は日本のはるか南の太平洋上、南鳥島近海
- 北陸-中部地方-伊豆半島上空を通過する南行コース
- 再突入インターフェースポイント(120km上空)は北緯42度付近
- 再突入インターフェースポイントから、およそ2500-3000km先に落下(着水)
- 火球になり始める高度は80km付近
- 大気との衝突で機体が大規模に崩壊する(大火球となる)のは高度70-80km付近
- 高度60kmまで達すると、急減速して垂直に落下していく
機体が大規模崩壊し、昼間の大火球が期待できそうなポイントは北緯30度以南と想像されるため、一番近い関東でも地平線ぎりぎりとなり、残念ながら観測できる見込みは薄いと言わざるを得ない。火球になり始める高度80kmのポイントであれば、10度以下の低空ではあるが可視となる。小笠原諸島の父島付近では、仰角10度程度と低いながらも北東方向に火球が目撃できるかもしれない。
一方、大気との衝撃で機体が加熱されると、煙のような雲を引くことが、これまでの再突入でも確認されている。確証がある情報ではないのだが、90km前後の高度からこうした振る舞いが起こり始めるとすれば、火球として観測できなくとも、雲を引きながら移動していく様子が目撃できるかもしれない。
もちろん、当初の計画より本州に近い場所に落下してきた場合には、南東方向にHTV-7の火球が目撃される可能性もあり得る。何が起こるかわからないというのが人工衛星追跡の醍醐味でもある。落下経路の周囲200km圏内にお住まいの方は「ダメ元」という気持ちで、念のため11日朝の空は注視いただきたい。
参考:HTV-7の各地での見え方
※方位角は南を0度として西回り。
※低空のHTV-7は太陽に近く確認しにくいことが予想される。
○館山(房総半島南端)
90kmポイント 方位角 70度 仰角 45度 85kmポイント 方位角 330度 仰角 20度 80kmポイント 方位角 325度 仰角 10度 75kmポイント 方位角 325度 仰角 2度
○東京
90kmポイント 方位角 30度 仰角 35度 85kmポイント 方位角 340度 仰角 15度 80kmポイント 方位角 330度 仰角 8度 75kmポイント 方位角 320度 仰角 2度
○名古屋
90kmポイント 方位角 285度 仰角 25度 85kmポイント 方位角 300度 仰角 9度 80kmポイント 方位角 310度 仰角 1度 75kmポイント 方位角 305度 仰角 0度
〈参照〉
〈関連リンク〉
関連記事
- 2020/08/20 最後の「こうのとり」、大気圏再突入
- 2020/05/21 「こうのとり」9号機、打ち上げ成功
- 2019/09/25 「こうのとり」8号機、打ち上げ成功
- 2018/09/25 「こうのとり」7号機、打ち上げ成功
- 2017/08/02 ISSから撮影された高解像度4K映像
- 2017/01/31 「こうのとり」導電性テザー実証実験を実施、テザー伸展せず
- 2016/12/12 「こうのとり」6号機、打ち上げ成功
- 2015/12/24 2024年までのISS運用延長に日本も継続参加
- 2015/09/30 「こうのとり」5号機、大気圏再突入し任務完了
- 2015/08/19 「こうのとり」5号機打ち上げ成功
- 2015/06/10 宇宙の定期便「こうのとり」5号機、8月に打ち上げ
- 2015/01/08 油井宇宙飛行士が5月からISSに長期滞在
- 2013/09/30 JAXAが支援、シグナス補給船がISSとドッキング
- 2013/09/05 「こうのとり」4号機がISSから離脱 7日に大気圏突入へ
- 2013/08/12 「こうのとり」4号機、国際宇宙ステーションにドッキング
- 2013/08/05 「こうのとり」4号機打ち上げ成功 アイソン彗星撮影用カメラも搭載
- 2013/05/21 新型ロケット「イプシロン」試験機が8月22日打ち上げ
- 2012/09/14 「こうのとり」3号機、大気圏に突入しミッション終了
- 2012/07/30 「こうのとり」3号機がISSとドッキング
- 2012/07/23 「こうのとり」3号機の打ち上げ成功、27日に星出さんの待つISSへ