オシリス・レックス、早速ベンヌに水の存在を確認
【2018年12月18日 NASA(1)/(2)/US News】
NASAの探査機「オシリス・レックス」は、目的地の小惑星「ベンヌ」への接近段階にあった今年8月中旬から12月はじめにかけて、3つの観測機器で最初の科学観測を行った。
その観測で、可視光線・赤外線分光器「OVIRS」と熱放射分光器「OTES」が取得したデータから、酸素と水素の原子が結合したヒドロキシ基(水酸基、OH)の存在が明らかになった。ヒドロキシ基は水を含む粘土鉱物の中に全球規模で存在していると考えられている。これは、ある時点で岩石質の物質と液体の水との相互作用があったことを意味している。
一方で、幅500mほどのベンヌ自体は液体の水を留めておけるほど大きくはない。そのため、水の発見は、はるかに大きかったベンヌの母天体である小惑星に液体の水が存在していた可能性を示唆している。「水和鉱物がベンヌの表面全体に分布していることがわかれば、実にエキサイティングです。なぜなら、水和鉱物はベンヌに衝突した天体によって表面にばら撒かれたのではなく、ベンヌにもともと存在していたと考えられることになるからです」(米・アリゾナ大学月惑星研究所 オシリス・レックスミッションスペクトル分析チーム Ellen Howellさん)。
「小惑星全体に水和鉱物が存在するとなると、始原的な揮発性物質や有機物の組成を調べるオシリス・レックスのミッションにとって、太陽系形成の初期段階からの残骸であるベンヌは最高の探査対象となります。さらに、そのサンプルが地球へ2023年に持ち帰られれば、太陽系の進化と歴史に関する新たな情報という宝物を手にすることなります」(OVIRS副担当 Amy Simonさん)。
さらに、オシリス・レックスの「OCAMS」カメラで取得されたデータにより、以前に行われていた地上望遠鏡での観測結果が裏付けられた。2013年に研究チームが作成したベンヌのモデルは、直径や自転速度、傾斜角、全体の形状をほぼ実際に近い形で予測したものであったという。モデルの精度が高いということは、ミッション全体がベンヌにおける全ての任務に対して最適なものとして設計・計画されたことを意味する。ただし、ベンヌの南極付近にある大きな岩塊のサイズについては予測以上に大きく、高さは50mほど、幅は約55mあることもわかった。
また、ベンヌの表面に見られる岩塊の量は予想を上回っていた。研究チームでは、地球へ持ち帰るサンプルの採取場所をより的確に判断するために、近距離からさらに観測を進める予定だ。「これまでのところ、解決不可能な問題は見つかっていません。探査機の状態は良好で、観測機器も私たちが求める以上に実によく稼働しています。いよいよ、冒険開始の時が来ました」(オシリス・レックス主任研究員 Dante Laurettaさん)。
現在、オシリス・レックスは、ベンヌの質量を決定するために表面から7kmほどの距離まで近づく予備的なサーベイを実施中だ。質量がわかれば、小惑星の重力の影響が正確に見積もられ、12月31日に予定されている周回軌道投入の重要なデータとなる。また、質量は小惑星の構造や組成を理解するためにも役立つ。
周回軌道に入ったオシリス・レックスは2019年2月中旬まで軌道上に留まり、小惑星の上空約1.4~2kmの範囲を飛行する。この周回飛行により、「ベンヌは、これまでに探査機が周回飛行を行った最小の天体となる」「オシリス・レックスは、史上最も惑星状の天体へ接近し周回飛行を行った探査機となる」という2つの記録が打ち立てられることになる。
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