理論予測より多く存在、主星から遠く離れた重い惑星

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中心星から遠い惑星について探査結果と理論モデルを比較した研究から、海王星と土星の中間ほどの質量を持つ重い系外惑星は理論予測の10倍ほど多く存在しているという結果が発表された。

【2019年1月16日 JAXA宇宙科学研究所ケック天文台

木星のような巨大ガス惑星は、原始惑星系円盤中で微惑星が集まって惑星の核ができ、その周りに存在するガスが核を取り巻いて大気となることで形成されると理論的に考えられている。また、この「コア集積モデル」理論によると、周囲に十分な量のガスがなければ海王星(地球の17倍)程度の質量の惑星が形成される。そのため、海王星のような惑星と土星(地球の95倍)や木星(同318倍)のような惑星は多く形成されるが、その中間にあたる20~80倍の惑星は形成されにくいと予測されている。

土星と海王星、その中間の質量を持つ系外惑星の想像図
土星と海王星、その中間の質量を持つ系外惑星「OGLE-2012-BLG-0950L b」の想像図(提供:NASA/JPL/GODDARD/F. REDDY/C. RANC)

コア集積モデルは有力な惑星系形成理論ではあるものの、太陽系の状況に基づいて構築された理論であり、近年多数発見されている系外惑星系に当てはまるかどうかはわかっていない。

JAXA宇宙科学研究所の鈴木大介さんたちの研究チームは、重力マイクロレンズ法で発見された30個の系外惑星について統計的な解析を行い、惑星の質量比(主星質量に対する惑星質量の比)の分布を、モデルから予測される質量比分布と比較した。重力マイクロレンズ法とは、系外惑星の質量によって生じる重力レンズ効果の観測からレンズ源となる惑星の存在を検出するという手法であり、現時点では主星から離れた土星より軽いような系外惑星を検出可能な唯一の方法である。

比較研究の結果、20~80地球質量に相当する質量比を持った惑星の観測数は、モデルから推定される量よりも約10倍多いことが明らかになった。コア集積モデルでは作られにくいと考えられてきた惑星が、実際には多数存在する可能性を示唆するものだ。これまで見過ごされてきたプロセスが惑星形成過程に含まれている可能性や、中心星の質量の違いによって惑星形成の環境が変化する可能性を示しているのかもしれない。

このような中間質量を持つ系外惑星の一例として、米・メリーランド大学のAparna Bhattacharyaさんたちの研究チームでは、いて座の方向約9700光年の距離に位置する「OGLE-2012-BLG-0950L b」の質量をケック天文台などの観測から明らかにした。この惑星は鈴木さんたちが統計的な解析を行った系外惑星の一つである。

OGLE-2012-BLG-0950L bの想像図
系外惑星OGLE-2012-BLG-0950L bの想像図(提供:NASA/GODDARD/F. REDDY)

Bhattacharyaさんたちの解析によると、惑星の質量は地球の39倍、主星の質量は太陽の0.58倍であり、主星が太陽と同じ質量とすれば惑星は地球の67倍に相当する。また、惑星は主星から約2.7天文単位(約4億km)離れており、水が液体・固体になる境界の「スノーライン」よりも遠いところにある。これまでは惑星の質量比しかわかっていなかったが、追加観測によって惑星単独の質量が求められ、それがまさに「モデルでは作られにくいとされる質量範囲にある」ことが明らかになったわけだ。

OGLE-2012-BLG-0950L bを含め今回の観測データは、恒星密度が比較的高い天の川銀河の中心方向で集められたものである。今後、違う領域の観測データを増やすことができれば、コア集積モデルによる惑星系形成理論の見直しが必要なのか、惑星系は環境に依存するのかといった議論が進むと期待される。「今回明らかになった観測結果と理論予測の不一致を解明していくことが、普遍的な惑星形成の理解に繋がると期待されます。惑星の質量を精密に測定し統計を増やすことが、惑星形成解明への次のステップとなります」(鈴木さん)。

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