超高速で回転する、クエーサー中心のブラックホール
【2019年7月9日 Chandra X-ray Observatory】
米・オクラホマ大学のXinyu Daiさんたちの研究チームがNASAのX線天文衛星「チャンドラ」で、98億~109億光年の距離にある5つのクエーサーを観測した。それぞれの中心には太陽質量の1.6億~5億倍という超大質量ブラックホールが存在しており、その自転速度を調べるのが観測の目的だ。
地球から見ると、これらのクエーサーの手前には別の銀河が存在しており、銀河の質量が作り出す重力レンズ効果によって各クエーサーの像は複数に分かれて観測される。今回の観測ではさらに、銀河内の恒星によるマイクロ重力レンズ効果の影響もとらえることができており、そのおかげで、X線放射が狭い範囲から発生していることが明らかにされた。
X線は、ブラックホールを取り巻く降着円盤の物質が回転しながらブラックホールへと落ち込んでいくときに高温となることによって放射される。このときにブラックホールが自転していると、物質はブラックホールにより近い領域を周回するようになる。つまり、狭い領域からのX線放射は、超大質量ブラックホールが高速で自転していることを示唆するものだ。
観測データから、「アインシュタイン・クロス」と呼ばれる4つの重力レンズ像で知られる、みずがめ座方向のクエーサー「Q2237」では、中心ブラックホールはほぼ光速で自転していることが明らかにされた。また他の4つについても、光速の約50%で自転していることが示された。こうした高速自転は、X線スペクトルに見られる特徴からも確かめられている。
超大質量ブラックホールがこれほど高速自転している理由について、研究チームでは、ブラックホールと同じ向き、同じ角度で回転する降着円盤から数十億年以上にわたって物質が供給され続けることで、ブラックホールが成長してきたことを可能性として挙げている。
〈参照〉
- Chandra X-ray Observatory:X-rays Spot Spinning Black Holes Across Cosmic Sea
- The Astrophysical Journal:Constraining Quasar Relativistic Reflection Regions and Spins with Microlensing 論文
〈関連リンク〉
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