プレッツェルのような双子星の「へその緒」
【2019年10月25日 アルマ望遠鏡】
天の川が最も太く明るく見える付近に、たばこを吸うときに用いるパイプの形に見える暗い部分がある。その正体は、塵が濃く集まって背景の光を遮っている暗黒星雲だ。暗黒星雲は星形成の現場でもあり、可視光線では見えない星雲内部を赤外線や電波で観測すると、星が誕生する様子や生まれたての原始星などをとらえらることができる。
独・マックスプランク地球外物理学研究所のFelipe Alvesさんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、このパイプ星雲中に存在する原始星の連星系を観測し、星のすぐそばに広がるガスの分布を初めて詳しく明らかにした。
「真ん中に見える2つの点がそれぞれ、双子星のすぐそばを取り巻いているガスと塵の円盤だと考えています。円盤のサイズは太陽系の小惑星帯と同じくらい(直径8億km程度)で、円盤どうしの間隔は太陽から地球までの約28倍(42億km、太陽~海王星くらい)です」(Alvesさん)。
2つの星周円盤は、ハートあるいはプレッツェルのような形をした、さらに大きく複雑な形のリングに取り囲まれている。この細長い塵とガスの帯には木星80個分の質量が含まれている。「私たちは初めて、星の母体となるガス雲と双子原始星をつなぐ『へその緒』のような構造を発見しました。この『へその緒』づたいに流れてくるガスや塵を取り込むことで、星たちは成長していくのです」(独・マックスプランク地球外物理学研究所 Paola Caselliさん)。
原始星がガスや塵を取り込む過程は2段階に分けられる。まず初めに、撮影されている範囲よりも外側から、今回明らかになった複雑な形の「へその緒」を通って、それぞれの星の周りの円盤にガスや塵が流れ込む。画像では下側に見えている星周円盤のほうに、より多くの物質が降着しており、電波で明るく輝いている。その次の段階として、円盤から中央にある原始星に物質が取り込まれる。
「この連星系の周りの物質は、とても複雑な動きをしながら、それぞれの星に2段階のプロセスを経て降着しているのだと考えています。この観測結果は理論的な研究結果ともよく一致していますが、多重連星系がどのように作られるのかを理解するためには、他の若い連星系の観測をもっと行う必要があります」(Alvesさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:プレッツェルのような双子星の「へその緒」
- ESO:A Cosmic Pretzel - Twin baby stars grow amongst a twisting network of gas and dust
- Science:Gas flow and accretion via spiral streamers and circumstellar disks in a young binary protostar 論文
〈関連リンク〉
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