軌道周期が51分の激変星
【2022年10月13日 MIT News】
ヘルクレス座の方向約3000光年の距離にある「ZTF J1813+4251」(以降ZTF J1813)は、質量が太陽の1割しかない恒星と、燃え尽きた星の中心核が残った白色矮星からなる連星だ。両者の距離は非常に近く、恒星から白色矮星へガスが流れ込んでいる。このような天体は激変星と呼ばれるが、ZTF J1813の2つの天体はこれまでに知られているどの激変星よりも短い、51分という周期でお互いの周りを回っている。
ZTF J1813は、米・マサチューセッツ工科大学のKevin Burdgeさんたちの研究チームが、米・パロマー天文台の突発天体掃索プロジェクト「Zwicky Transient Facility(ZTF)」のデータから見つけ出した。ZTFでは10億個以上の星をそれぞれ1000枚以上撮影して、日、月、年単位で変化する明るさを記録している。研究チームは、その膨大なデータの中からアルゴリズムを使って、1時間以下の周期で点滅しているように見える星約100万個を選び出した。そこから注目に値する信号を目視で探した結果、ZTF J1813に行き着いた。
続いて行われたZTF J1813の観測で、連星が互いを隠すことによる明るさの変化がはっきりととらえられ、それぞれの星の質量や半径、公転周期が正確に測定された。
もし連星系の星が太陽のような天体であれば、軌道周期が8時間よりも短くなることはない。51分という極端に短い周期は、連星を構成する星がどちらもコンパクトであることを意味する。白色矮星の方は質量が太陽の約半分で直径は100分の1と高密度だが、これは白色矮星として普通のことだ。一方、恒星の方は質量も直径も太陽の10分の1で、密度は太陽の100倍もある。
太陽のように核融合を行っている恒星がそれだけ高密度になるということは、その大部分が水素より重いヘリウムに置き換わっていることを示唆する。激変星では白色矮星が相手の恒星の外層に含まれる水素をはぎ取ってしまい、恒星の中心で生成されていたヘリウムが残されることは昔から提唱されていた。
研究チームのシミュレーションによれば、ZTF J1813の恒星では今後水素が完全に失われ、ヘリウムを多く含む高密度のコアが残ると考えられる。7000万年後には2つの星はさらに接近し、軌道周期はわずか18分となる。その後恒星は赤色巨星として膨張し、連星は互いに離れていくと予測されている。
〈参照〉
- MIT News:Astronomers find a “cataclysmic” pair of stars with the shortest orbit yet
- Nature:A dense 0.1-solar-mass star in a 51-minute-orbital-period eclipsing binary 論文
〈関連リンク〉
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