新種の爆発現象「マイクロノバ」を発見

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白色矮星の表面全体で起こる爆発現象である新星(ノバ)に対して、この爆発が磁場に閉じ込められた狭い領域で起こる小規模な「マイクロノバ」が観測された。

【2022年4月26日 ヨーロッパ南天天文台

英・ダラム大学のSimone Scaringiさんたちの研究チームは、系外惑星探査衛星TESSの観測データの分析などから「マイクロノバ(micronova)」を発見したと発表した。「マイクロ(100万分の1)」という名のとおり、マイクロノバで解放されるエネルギーは古典的な新星(nova)の100万分の1程度だ。天文学的にはごく控えめな現象でも、身近なスケールと比較すれば大規模な爆発であり、数時間のうちにギザのピラミッド35億個分の質量(2京トン)を燃やしてしまう。

マイクロノバが観測されたのは、はと座TV星、おおぐま座EI星、ASASSN-19bh(はちぶんぎ座)という3つの天体で、いずれも白色矮星と通常の恒星の近接連星だ。

連星の距離が十分に近いと、通常の恒星から白色矮星へガスが流れ込む。このガスが白色矮星全体に降り積もった場合、一定量に達した時点で水素の核融合反応が始まり、表面全体が数週間にわたって輝く。これが古典的な新星だ。ところが、Scaringiさんたちの分析によれば、3つの連星系では白色矮星が強い磁場を持っていたため、ガスの流入経路が磁極の方向に集中していた。こうして局所的に溜まった水素が爆発するので、その規模は新星よりも小さくなる。

マイクロノバ発生メカニズムのイメージイラスト
マイクロノバ発生メカニズムのイメージイラスト。白色矮星の周囲には伴星から奪われた物質からなる円盤が存在する。円盤内の物質が白色矮星の強い磁場によって極へと向かい、白色矮星の高温の表面に落ち込むことで、部分的な熱核暴走が引き起こされてマイクロノバとなる(提供:ESO/M. Kornmesser, L. Calçada)

新星よりも小規模な爆発現象としては既に「矮新星(dwarf nova)」が広く知られている。こちらも白色矮星と恒星の近接連星で発生するが、白色矮星本体ではなく、白色矮星を取り巻くガスの降着円盤が増光する現象だ。マイクロノバは新星と同じ現象がより狭い領域で起こっている点で矮新星と異なる。

マイクロノバという新種の爆発が見つかったことで、天体の爆発現象に関する私たちの理解は修正を迫られるかもしれない。このような爆発は意外と頻発している可能性もあるという。「宇宙がどれだけダイナミックなものかを教えてくれます。こうした現象は割と普通に起こっているかもしれませんが、あまりに速いので発生の現場をとらえるのが難しいのです」(Scaringiさん)。

マイクロノバを起こした白色矮星と伴星のイメージイラスト
マイクロノバを起こした白色矮星(左)と、伴星(右)のイメージイラスト(提供:Mark Garlick