3連星を取り巻く惑星系円盤の3重構造
【2020年9月11日 アルマ望遠鏡】
太陽は単独の星だが、天の川銀河の星の過半数は2個以上の星が互いに回りあう連星系として生まれる。このような連星の周りを回る系外惑星は数多く発見されているが、3連星の周囲を回る惑星はまだ発見されていない。
3連星の周りで惑星は作られにくいのかという疑問へのヒントは、惑星の誕生現場である若い中心星を取り巻く塵とガスの円盤、原始惑星系円盤を調べることで得られるはずだ。そこでカナダ・ビクトリア大学のJiaqing Biさん、Ruobing Dongさん、工学院大学の武藤恭之さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、約1300光年彼方の3連星であるオリオン座GW星を取り囲む、巨大な原始惑星系円盤を観測した。
観測の結果、原始惑星系円盤が3本のリングでできており、その半径が46天文単位(1天文単位は約1.5億km)、188天文単位、338天文単位であることが明らかになった。太陽系で最も外側の惑星である海王星の軌道半径が30天文単位であることと比べると、オリオン座GW星の原始惑星系円盤が星からいかに遠い場所にあるかがわかる。これまで数多くの原始惑星系円盤にリング構造が見つかっているが、オリオン座GW星の最も外側のリングは、これまで発見された中でも最大だ。
それぞれのリングの電波強度からリングに含まれる塵の質量を調べたところ、地球質量の75倍(最も内側)、170倍、245倍(最も外側)と見積もられた。「これは、巨大惑星の種をオリオン座GW星の周囲に作るのに十分な量であると考えられます」(武藤さん)。
3本のリングをさらに詳しく分析したところ、中心の3連星の軌道面と比べてリングは3本とも大きく傾いていることも明らかになった。とくに、最も内側のリングの傾き方は他の2本のリングとは大きく異なっている。「内側のリングがこれほど傾いていることがわかったときには非常に驚きましたが、アルマ望遠鏡で同時に観測した円盤内のガスのデータでも、円盤の内側がねじれていることが確認できました」(Biさん)。
また、中心の3連星が原始惑星系円盤に及ぼす影響を調べたシミュレーションからは、3連星の重力だけでは内側のリングの大きな傾きを再現できないことが示された。研究チームではこの結果から、円盤内に惑星が存在する可能性を指摘している。「惑星によって円盤に隙間が作られ、内側のリングと外側のリングが作られたのかもしれません」(ビクトリア大学 Nienke van der Marelさん)。
Biさんたちのチームとは独立に、英・エクセター大学のStefan Krausさんたちの研究チームはアルマ望遠鏡とヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTを使ってオリオン座GW星を近赤外線で観測し、最も内側のリングの影が外側に伸びていることを発見した。これは、内側のリングが大きく傾いていることを裏付ける結果といえる。
また、Krausさんたちもリング形成に関するシミュレーションを行い、大きく傾いたリングが3連星の重力だけでも作られうるという結果を得た。これはBiさんたちの結論と異なるものであり、議論が続いている。
いずれにしても、オリオン座GW星は連星の周りの複雑な環境下における惑星形成を理解するための重要なサンプルとなるものだ。「連星の周囲で惑星形成がどのように起こるかという問題は長く議論されてきました。今回の観測によって、3連星という、より複雑な系における惑星形成を観測に基づいて調べる道筋が切り拓かれました。今後、系外惑星の多様性の研究がますます進展していくでしょう」(武藤さん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:三つ子星のまわりで見つかった、互い違いの原始惑星系円盤
- ESO:New Observations Show Planet-forming Disc Torn Apart by its Three Central Stars
- Carnegie Science:Peculiar planetary system architecture around three Orion stars explained
- The Astrophysical Journal Letters:GW Ori: Interactions between a Triple-star System and Its Circumtriple Disk in Action 論文
- Science:A triple-star system with a misaligned and warped circumstellar disk shaped by disk tearing 論文
〈関連リンク〉
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