アルマ望遠鏡が描く双子の星の軌道運動
【2021年10月11日 アルマ望遠鏡】
宇宙には太陽のように単独で存在する星だけでなく、2つ(以上)の恒星が互いの周りを回る連星も数多く存在している。そうした連星系の中で惑星を持つものも見つかっているが、連星系の惑星がどのように誕生するかについては謎が多い。
恒星が単独で生まれる場合、原始星を取り巻くガスと塵が1つの原始惑星系円盤を形成し、その中から惑星が生まれる。一方、生まれたての連星系ではそれぞれの恒星の周りに原始惑星系円盤が観測されるが、これらの円盤が最初は1つの大きな原始惑星系円盤だったのか、それとも星の材料となる分子雲が最初から2つの塊に分裂していたのかが問題となる。1つの円盤が2つに分かれたのであれば、2つの円盤面と連星の軌道は重なっているはずだ。一方、最初から2つの塊があったのであれば、それぞれが形成する原始惑星系円盤と連星の軌道は不揃いになりうる。
若い連星系で2つの原始惑星系円盤が傾いているケースは、これまでに何例か見つかっている(参照:「互いに傾いた原始惑星系円盤を連星系で発見」)。いずれも恒星間の距離が離れていて、分子雲が最初から分裂して2つの惑星系円盤になったのだと考えられる。ただし、恒星が互いの周りを回る公転周期も長いため、その軌道をとらえて傾きを比較するまでは至っていなかった。
鹿児島大学(研究当時)の市川貴教さんたちの研究チームは、アルマ望遠鏡の高い解像度とアーカイブデータを活用することで、原始惑星系円盤を持つ連星系の公転運動をとらえている。市川さんたちは約480光年彼方に位置する年齢1000万年程度の若い連星系おうし座XZ星系について、2015年、2016年、2017年に観測されたデータを解析し、連星が天球上を時計回りに運動していることを発見した。おうし座XZ星系の3年間での軌道運動の大きさは3.4天文単位(約5.1億km)に達する。
さらに、この連星系の軌道面は、個々の原始惑星系円盤の円盤面とも異なっていることがわかった。原始惑星系円盤どうしは40度傾いているため、連星どうしの軌道を含め3つ全てが異なる平面上にあるということになる。
「この研究は、高感度かつ高解像度を誇るアルマ望遠鏡の膨大なアーカイブデータをフル活用することにより、天体の運動の動画を作成し、それに基づいた研究ができることを示しました。連星の軌道運動のみならず、星から吹き出すジェットの運動や星の明るさの時間変化など、様々な天体物理学研究に応用可能な手法です」(鹿児島大学 高桑繁久さん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:アルマ望遠鏡が描く双子の星の軌道運動
- The Astrophysical Journal:Misaligned Circumstellar Disks and Orbital Motion of the Young Binary XZ Tau 論文
〈関連リンク〉
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