祝100年!「時」と「科学」を思う「時の記念日」

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2020年の6月10日は「時の記念日」が誕生してからちょうど100年となる。天文学と非常に深い関係を持つ「時」について、改めて考えてみよう。

【2020年6月10日 星ナビ編集部

※星ナビ2020年6月号7月号記事より再編

今から100年前の1920年(大正9年)、東京教育博物館(現在の国立科学博物館)で「時」をテーマとする展覧会が開催された。当時の日本は、日々の生活を科学的に改善することを大きな目的の一つとしており、「時間を正確に守ること」を推奨する機運が高まっていた。展覧会が大盛況となったことを受けて、会期中にセレモニーを実施して時間尊重を宣伝しようという声が上がった。

日本書紀によると、飛鳥時代に大津京(現在の滋賀県大津市付近)で漏刻(ろうこく)が設置され、鐘や太鼓で時を知らせたことが記されている。天智天皇十年四月二十五日、グレゴリオ暦に直すと671年6月10日の出来事であり、この故事にちなんで、1920年6月10日に大々的な事業が行われた。100年後まで続く第1回「時の記念日」である。6月10日正午には日本で初めての「カウントダウン」が実施され、人々は初めて「時」や「秒」、「正確な時刻」というものを意識するようになった。

「時」は科学と非常に深い関係を持つ。1秒の長さはもともと天体の運行を基準にしていたが、正確さを求めて原子時計が生まれ、世界時と日本標準時の差を埋める仕組みが作られ、現在では次世代原子時計の開発も進められている。また精度の向上によって、観測天文学の分野もこの100年でその意義が大きく移り変わってきた。

星ナビでは「刻々の100年」と題して、2020年6月号『「時の記念日」誕生秘話』、7月号『「秒」の意識と天文学』の前後編で詳しく解説している。また、東京上野の国立科学博物館明石市立天文科学館では、100年ぶりの『「時」展覧会2020』を開催中だ。

星ナビ7月号と展覧会ポスター
「時」と「天文学」の関係を掘り下げた星ナビ7月号特集(左)と、国立科学博物館・明石市立天文科学館で開催中の『「時」展覧会2020』チラシ(右)

日本標準時の基準となる東経135度子午線が通る明石市立天文科学館では、時の記念日をさらに盛り上げるために、お家で楽しめるイベントを企画している。6月10日(水)午前10時からYouTubeでライブ配信『オンラインイベント「時の記念日100周年」』をスタート。お祝いビデオメッセージの紹介や、太陽南中のタイミングを日本各地の天文台から中継する「全国天文台子午線リレー」、プラネタリウム特別投影を行うという。

多くの日本人が時間の意義を知った明治、大正時代から1世紀。「時」への意識は文字通り刻々と変化し、特にこの100年の進化は人々の生活様式を根底から変えた。その裏側には互いに密接に結びつき、影響し合って発展を続けてきた「時」と「科学」の関係が垣間見える。時の記念日100周年には、そんな両者の歴史と未来に思いを寄せていただきたい。

星ナビ表紙

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