模擬実験で示唆、生命の材料は隕石の衝突で作られる
【2020年6月12日 東北大学】
生命の起源につながる材料は、太古の地球で生成したものと地球外から飛来したものがあると考えられてきた。このうち地球外からの有機物は、隕石や彗星塵に含まれていたと考えられているが、その量や種類はわかっていない。
もう一方の地球で生成し得る有機物の種類や量については、当時の地球大気の組成が大きく影響したと考えられている。大気の微量成分である還元的な分子から有機物が生成されることは知られていたが、その微量成分の量や組成に関する理解は進んでいない。また、当時の地球大気の主要成分と考えられている窒素や二酸化炭素から生命の材料となる有機物が生成される可能性については、放電による研究が報告されているのみで、非常に限定的と考えられてきた。
東北大学の古川善博さんたちの研究グループは、隕石が地球の海洋に衝突する際に起こる化学反応の模擬実験を行い、窒素と二酸化炭素が、水と隕石に含まれる主要な鉱物と反応することによって、タンパク質の材料であるアミノ酸が生成されることを明らかにした。
古川さんたちは2015年に、衝突によってアンモニアを窒素源としてアミノ酸や核酸塩基が生成されるという研究結果を発表している。今回の研究と合わせて、窒素が大気中に大量に存在したと考えられている生命誕生前の地球では、これまで考えられていたものとは異なる、生命の材料分子の生成反応が起こっていたことが示された。
太古の地球と同様に太古の火星も二酸化炭素と窒素を多量に含む大気で覆われ、液体の海が存在し、隕石が大量に衝突していた時期があったと考えられている。今回の研究成果は、当時の火星でも隕石の衝突によってアミノ酸が生成されていた可能性を示しており、太古の火星でもタンパク質の材料が生成されるという段階まで、生命誕生に向けた化学進化(生命誕生までの化学反応)が進んでいたことを示唆するものでもある。
〈参照〉
- 東北大学
- Scientific Reports:Impact-induced amino acid formation on Hadean Earth and Noachian Mars 論文
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