星系への侵入者、原始惑星系円盤を乱す
「侵入者」が見つかったのは、地球から約3700光年の距離にある、おおいぬ座Z星である。カナダ・ビクトリア大学のRuobing Dongさんたちの研究チームが、アルマ望遠鏡、すばる望遠鏡、米国立電波天文台(NRAO)のカール・ジャンスキー超大型電波干渉計(VLA)による観測で検出した。
生まれたての恒星の周りで惑星が形成されているときに、侵入してきた天体によって星系がかき乱されることは、シミュレーションでは予期されていた現象だったが、はっきりと観測されたのは初めてだ。
おおいぬ座Z星はお互いの近くを回る若い連星の周りに、惑星の材料となる原始惑星系円盤が形成されている星系だ。時おり爆発的な増光を示すことが以前から知られていて、2016年に発表された観測結果では円盤から細長く伸びる尾のような構造が見つかっている。今回見つかった天体の位置は、連星から約5000天文単位(太陽~地球の5000倍、約6500億km)離れた尾の先だったことから、この構造がが飛来天体によるものだと示唆された。また、天体の重力で円盤がかき乱されたため、円盤から連星へと物質が降り積もりやすくなり、増光を引き起こしているのだと考えられる。
今回観測されたような外部からの侵入者は、思わぬ形で若い恒星と惑星系の進化に影響を及ぼすかもしれない。「このような事象を研究することで、私たちの太陽系がどのように発展してきたのか、過去の歴史を知ることができます。新しく形成された星系でこのような現象が起こるのを見ることで、『ああ、これは私たちの太陽系でずっと昔に起こったことかもしれない』と言うのに必要な情報を得ることができるのです」(Dongさん)。
〈参照〉
- すばる望遠鏡:惑星誕生のゆりかごを揺らす飛来天体
- NRAO:ALMA Catches “Intruder” Redhanded in Rarely Detected Stellar Flyby Event
- Nature Astronomy:A likely flyby of binary protostar Z CMa caught in action 論文
〈関連リンク〉
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