JWSTが主鏡調整用に恒星を初撮影

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で主鏡の調整のために初めて恒星の画像が撮影された。また、現在の主鏡の姿を「自撮り」した画像も公開されている。

【2022年2月21日 NASA Blogs

NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、1月19日に主鏡などの展開を完了した後、同24日にラグランジュ点L2を周回する最終軌道に到着した。現在は近赤外線カメラ「NIRCam」を使い、主鏡を構成する18枚のミラーセグメントの方向調整(アラインメント)が進められていて、その第一段階が終わろうとしている。

2月2日、JWSTは主鏡の調整用データを得るために、おおぐま座にある6.9等級の恒星「HD 84406」の撮影を行った。この星が選ばれた理由は、周囲に同じような明るさの星がなく識別しやすいためだ。

今回の撮影では、目標星周辺の156か所に望遠鏡を向け、NIRCamの計10個のイメージセンサーで合計54GB分、1560枚の画像が撮影された。撮影には約25時間かかったが、最初の6時間のうちに全てのミラーセグメントでHD 84406を視野内に入れることができた。撮影された画像は20億ピクセルの巨大な一枚画像にモザイク合成され、星像が写った中心部分が公開されている。

モザイク画像
ミラーセグメントの調整用に撮影された1560枚の画像をモザイク合成したもの(中央部分のみ)。18個の光点が各セグメントが映し出したHD 84406の像で、像に付いている符号はその像を映したミラーセグメントの名前(下の画像)を表す。"WING" と書かれているのは、打ち上げ時に折り畳まれていた左右各3枚ずつのセグメントが映し出した星像。画像クリックで拡大表示(提供:NASA)

ミラーセグメント
JWSTの18枚のミラーセグメントの名前(提供:STScI

今回得られたモザイク画像では、18個の星像はまだぼやけたり位置や形がゆがんだりしているが、この画像が次の調整の基礎として使われる。JWSTチームでは今後約1か月をかけて、個々のセグメントがとらえた18個の像が重なり合って1個の星の姿となるように、各セグメントを微調整していく予定だ。

「初日からこれほど大量の画像を正しく撮影するためには、JWSTの科学オペレーションと地上のデータ処理システムの全てが、宇宙にいるJWSTと共に最初から円滑に動く必要がありました。星像探索の早い段階で、18枚全ての光がほぼ中央に来ていることがわかり、主鏡の調整作業にとって幸先の良いスタートとなりました」(米・宇宙望遠鏡科学研究所 Marshall Perrinさん)。

今回使われたNIRCamは、JWSTの科学観測で鍵となるカメラであると同時に、主鏡を調整する際の波面センサーとしても利用される。NIRCamは視野が広い上に、他の機器よりも高い温度で安全に動作する設計になっているため、JWSTの温度がまだ下がりきっていない初期段階の主鏡調整にはもっぱらNIRCamが使われることになっている。NIRCamには調整作業を支援するためのレンズなども組み込まれている。

主鏡の自撮り画像
NIRCam内部に搭載されたレンズで撮影された、主鏡の『自撮り』画像。これは主鏡の状態確認や調整のためのレンズで、科学観測には使われない。この画像では、明るく輝いているミラーセグメントが目標星をとらえており、他のセグメントは向きがずれていることを示している(提供:NASA)

今回の撮影は、NIRCamの本来の動作温度よりもずっと高い温度で行われたため、モザイク画像にはノイズなどが写っているが、今後望遠鏡の温度が下がればノイズは大幅に減る見込みだ。規定の温度まで下がった段階で、残り3台の観測装置も順次稼働を始める。調整作業は今後数か月かけて行われ、最初の科学観測画像は今年夏ごろ公開される予定だ。

主鏡調整の初期段階についての解説動画(提供:James Webb Space Telescope)

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