低密度の系外惑星、「煮えたぎる海洋惑星」か
【2022年12月22日 NASA】
地球はよく「水の惑星」と呼ばれる。太陽系の他の惑星と比べると、広大な海の存在は際だった特徴だ。しかし、水が地球全体の体積に占める割合は0.1%あまりでしかなく、海の深さは平均4km弱、一番深いところで10km程度しかない。太陽系外の惑星に注目する研究者たちは、どこかに体積の大部分が水で、深さ数百~数千kmの海に覆われた「海洋惑星(英語ではWater World、Ocean Worldなど)」が存在するのではないかと予想していた。
こと座の方向218光年の距離にある、太陽より小さな恒星「ケプラー138」を巡る2つの惑星「ケプラー138 c」と「ケプラー138 d」は、まさにそうした海洋惑星かもしれない。
カナダ・モントリオール大学のCaroline Piauletさんたちの研究チームは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡と赤外線天文衛星「スピッツァー」で2つの惑星を観測し、それぞれの質量と体積を計算した。すると、ケプラー138 cとdの質量はともに地球の約2倍であるのに対し、体積は3倍以上であることがわかった。つまり、岩石惑星である地球と比べ、両者の平均密度は低い。この結果を説明するには、岩石の一部をもう少し軽い物質で置き換えればよいが、その軽い物質として一番有力なのが水だ。
実は、もっと小さなものにも注目すれば、こうした天体は太陽系にも存在する。木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスなど、氷衛星と呼ばれる天体だ。いずれも地球より密度が低く、岩石の中心核が厚い氷の層で覆われた構造をしていると考えられる。大ざっぱに言えば、このような氷衛星をそのまま大きくして、中心星に近づければ、海洋惑星ができあがる。
「これまで私たちは、地球より少し大きな惑星は、金属と岩でできた球体だと考えていました。それはつまり、地球をそのまま大きくしたような天体なので、『スーパーアース』と呼んできたわけです。ところが今回、2つの惑星ケプラー138 cとdはそれらと性質がだいぶ異なり、体積のかなりの割合がおそらく水で構成されているようです。これこそ、天文学者たちが長きにわたって想定してきた『海洋惑星』というタイプの惑星が実在するという最も有力な証拠です」(モントリオール大学 Björn Bennekeさん)。
ただし「海洋」といっても、両惑星の表面は私たちが知る海とはまったく違うだろう。どちらも中心星に近すぎて、温度が水の沸点を超えてしまうからだ。そのため表面は厚い水蒸気の層で覆われていて、高い圧力がかかる深層の水は液体、または高温高圧下で気体と液体両方の性質を示す超臨界流体になっていると考えられる。
ケプラー138 cもdも海洋惑星かもしれないが、その海に生命は住めそうにない。その一方でPiauletさんたちは、ケプラー138に生命の居場所が残っている可能性も示している。4つ目の惑星「ケプラー138 e」を発見したのだ。この惑星について得られているデータは少ないが、比較的小さく、他の3つの惑星よりも中心星から遠く、38日かけて中心星の周りを回っている。中心星の温度を考慮すると、この距離なら表面に液体の水が存在できる。もしかすると、ケプラー138 eこそ、地球と同じ意味で「水の惑星」になっているかもしれない。
〈参照〉
- NASA:Two Exoplanets May Be Mostly Water, NASA's Hubble and Spitzer Find
- ESO:Hubble helps discover a new type of planet largely composed of water
- Nature Astronomy:Evidence for the volatile-rich composition of a 1.5-Earth-radius planet 論文
〈関連リンク〉
- Spitzer Space Telescope:
- HubbleSite
- The Extrasolar Planets Encyclopaedia
- Kepler-138 b / c / d / e
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