1年周期の再帰新星、今年も爆発を観測
【2022年12月20日 高橋進さん】 2023年12月8日更新
新星とは白色矮星と主系列星(または赤色巨星)との近接連星系で起こる爆発現象です。主系列星から白色矮星に流れ込んだ水素ガスが白色矮星の表面に多量に溜まっていき、あるタイミングで急激な核融合反応を起こして爆発し、新星として観測されます。
ただ、この爆発は表面に溜まった水素ガスを吹き飛ばしますが、白色矮星自体を壊してしまうことはありません。そのため新星爆発は、白色矮星の表面の水素ガスが臨界量を超えると何度も起こります。通常その間隔は数千年から数十万年と長いのですが、白色矮星の質量が大きく水素ガスの流入量が多い場合は爆発の頻度が多くなります。爆発間隔が数十年以下程度であれば何度も新星として観測されることになり、再帰新星(回帰新星、反復新星)と呼ばれます。
最も頻繁に爆発する再帰新星として知られているのが、アンドロメダ座大銀河M31に出現するM31N 2008-12aです。初めて観測されたのは2008年12月26日で、発見者は西山浩一さんと椛島冨士夫さんです。以来、平均363日(最大間隔472日、最小間隔310日)で増光が観測され、今季も12月初めに通算15回目となる爆発が観測されました。
今回の爆発を最も早くとらえたのはスペイン領カナリア諸島・テイデ天文台の観測チームで、12月2日19時50分(世界時)に19.18等(R等級)で発見しました。日本でも千葉県香取市の野口敏秀さんが3日8時13分(世界時)に、18.6等(CCDノーフィルター)で独立発見されています。予想よりは少し遅めの爆発でした。
これほど短周期で新星爆発が起こるのは、白色矮星の質量がかなり大きいからだと思われます。慶応大学の加藤万里子さんの計算では、M31N 2008-12aの白色矮星の質量は太陽の約1.38倍とされています。今後、白色矮星は毎年の爆発で物質を吹き飛ばしながらも質量が徐々に増えていき、チャンドラセカール限界(太陽質量の1.4倍)に達するとIa型超新星になると思われます。
新星や超新星は、いつ爆発が起こるか予想するのは難しく、爆発初期の観測はなかなかできません。M31N 2008-12aのように爆発の予想がある程度できる天体は、爆発初期の貴重なデータを得ることができる本当に重要な対象です。こうした天体の監視はアマチュアの観測も大きく寄与しています。今回の爆発では世界の第一線の天文台と共に、野口さんや板垣公一さん、清田誠一郎さん、名寄市立天文台(北海道)、大阪教育大など国内の多くの熱心な天体観測家によっても進められています。今後もこうした皆さんの協力によって、新星の研究がさらに進むと期待されます。
〈参照〉
- ATel:#15786: Recurrent Nova M31N 2008-12a: discovery of the 2022 eruption with the Las Cumbres Observatory global telescope network
- CBAT:PNV J00452883+4154096
〈関連リンク〉
- 日本変光星研究会
- VSOLJ Variable Star Bulletin
- アストロアーツ:
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