アンドロメダ座大銀河の質量は天の川銀河とほぼ同じかもしれない
【2018年2月22日 ICRAR】
アンドロメダ座大銀河(M31)は私たちの天の川銀河のすぐ隣にある巨大な渦巻銀河だ。2つの銀河の間隔は約200万光年で、宇宙的なスケールで見れば非常に近い。この2つの銀河に加えて、さんかく座の渦巻銀河M33、その他数十個の矮小銀河で「局部銀河群」と呼ばれる銀河の集団が構成されている。局部銀河群の中ではアンドロメダ座大銀河と天の川銀河がトップ2として飛び抜けて大きな質量を持っていて、この両者の比較ではアンドロメダ座大銀河の方が天の川銀河より2倍から3倍重いと考えられてきた。
西オーストラリア大学およびオーストラリア・国際電波天文学研究センターのPrajwal Kafleさんたちの研究チームは、銀河からの脱出速度を測定する新しい手法を使って、アンドロメダ座大銀河の質量に関する新たな推定を行った。
「たとえばロケットの打ち上げでは、地球の重力を振り切るために秒速11kmの速度で宇宙へ飛び立ちます。私たちの天の川銀河は地球の100京倍(10億の10億倍)以上重いので、天の川銀河の重力に打ち勝って銀河の外に出るには秒速550kmもの速度が必要です。私たちはこの原理を使ってアンドロメダ座大銀河の質量を絞り込んだのです」(Kafleさん)。
研究の結果、アンドロメダ座大銀河の質量は太陽の約8000億倍で、天の川銀河の質量とほぼ同じであることが明らかになった。これにより、アンドロメダ座大銀河のダークマター(暗黒物質)の総量がこれまで過大に見積もられていた可能性がでてきた。「アンドロメダ座大銀河に存在する高速度星の軌道を調べて脱出速度を見積もったところ、アンドロメダ座大銀河のダークマターの量はこれまで考えられていたよりもはるかに少なく、過去の観測から推定された量のわずか3分の1にすぎないことがわかりました」(Kafleさん)。
アンドロメダ座大銀河が天の川銀河に比べて大きいわけではないということになると、遠い将来に起こると考えられている2つの銀河の衝突についても、新たな数値シミュレーションなどの研究が必要になる。
Kafleさんは2014年にも今回の研究と同様の手法で天の川銀河の質量の推定値を下方修正しており、今回の発見は天の川銀河の周辺にある数々の銀河の性質を理解する上で大きな意味を持つと考えている。
「今回の成果は、両銀河が属する局部銀河群についての理解をすっかり変えてしまうものです。これまで、局部銀河群にはアンドロメダ座大銀河という最大の銀河が一つ存在し、天の川銀河はそれよりもわずかに小さいと考えてきましたが、このシナリオは完全に変わりました。過去50年間にわたって蓄積されてきた局部銀河群に関する知識が覆されたのは実にエキサイティングです」(Kafleさん)。
〈参照〉
- ICRAR:Milky Way ties with neighbour in galactic arms race
- MNRAS:The Need for Speed: Escape velocity and dynamical mass measurements of the Andromeda galaxy 論文
〈関連リンク〉
- アストロアーツ:
- メシエ天体ガイド:アンドロメダ座大銀河
- 画像投稿ギャラリー:アンドロメダ座大銀河
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