木星の気温変化は季節と無関係だが規則的

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40年以上にわたる木星の観測データから、大気の対流圏が決まったパターンで暖かくなったり寒くなったりしていることがわかった。変化は規則的だが、木星が太陽の周りを回る周期とは一致しない。

【2022年12月27日 すばる望遠鏡

ガス惑星である木星の特徴的な模様は、大気の低層部にあたる対流圏で生じる雲や嵐によって形作られる。つまり、木星の模様がこれからどう変化するかを予測するのは、木星の天気予報を行うようなものだ。だが、そのために必要な気象データ、とくに温度の長期的な変化に関するデータはこれまでそろっていなかった。

米・カリフォルニア工科大学/NASAジェット推進研究所のGlenn Ortonさんたちの研究チームは、1978年から2019年まで継続的に木星を赤外線で観測し、対流圏上層部の温度を測定してきた。木星は12年弱で太陽を1周するので、観測期間の40年強で3周以上したことになる。観測にはNASAの赤外線望遠鏡施設IRTF、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLT、そして国立天文台のすばる望遠鏡という3台の大型地上望遠鏡を使い、他の望遠鏡や探査機からのデータも加えて分析した。

木星
木星の赤外線画像。(左、中)2016年2月と3月にVLTが撮影、波長8.6μmと10.7μmのデータを重ねている。暗い領域は寒く曇っており、明るい領域は暖かく雲がない。(右)2019年にすばる望遠鏡の中間赤外観測装置COMICSが撮影、波長18μm(提供:ESO / L.N. Fletcher, NAOJ)

地球は1年で太陽を1周し、その間に地上では季節が巡る。これは地球の自転軸が公転面に対して約23.5度も傾いていて、日射量が変動することによるものだ。一方、木星の自転軸は3度しか傾いていないので、約12年の公転周期に伴う「季節変動」は存在しないと予想されていた。

ところが、Ortonさんたちの観測により、木星対流圏の温度に規則的な変動パターンが見つかった。しかもその周期は約4年や約7年などで、公転周期とのつながりが見いだせない。さらに、何千kmも離れた地点間で気温が規則的に連動しているケースもあった。「驚きでしたが、これは地球で見られる現象と似ています。ある地域の天気や気候のパターンが、他の場所の天気に大きな影響を与えることがあり、変動パターンが大気中のはるかな距離を越えてテレコネクトしている(遠隔相関がある)ように見える現象です」(Ortonさん)。

今回の成果は、木星の天気を理解することに貢献するだけでなく、予測にまでつながることも期待される。さらには太陽系や太陽系外のあらゆる巨大惑星の気候モデルを構築する上で、このデータは欠かせないものになりそうだ。