生まれたての太陽系を超新星爆発から守った盾
【2023年6月26日 国立天文台】
太陽系誕生直後から大きな変成を経てない隕石の成分を調べるという研究により、太陽系が形成されつつあるころに、近くで起こった超新星爆発に由来する放射性元素が降り注いだことが明らかになっている。しかし、本当に付近で超新星爆発が起こったのであれば、その衝撃波で太陽系の形成は妨げられていたはずだ。
なぜ、太陽系は超新星爆発の影響を受けずに済んだのか。国立天文台のDoris Arzoumanianさんたちの研究チームによれば、太陽系の形成現場となった「分子雲フィラメント」が衝撃波を防ぐ盾になったという。
分子雲フィラメントとは、星の材料となる濃い星間ガスがひも状に集まった領域で、太陽のような小質量星が生まれる現場となる。一方、超新星爆発を起こすような大質量星は、分子雲フィラメントどうしが重なった場所で作られることが知られている。
Arzoumanianさんたちが理論的に調べたところ、分子雲フィラメントが重なる場所で超新星爆発が起こった場合、その衝撃波は分子雲フィラメントに吸収されるため、その中にある太陽系にはほとんど影響を与えないことが示された。また、爆発で放出された放射性元素は一度フィラメントに降り注ぎ、そこから太陽系の形成現場へ間接的に運ばれることで、効率的に集められることも明らかになった。
研究チームでは、分子雲フィラメントを太陽の誕生環境として考えることが、観測されたている太陽系の性質を説明する理論モデルを導き出す上で重要だと結論づけている。
〈参照〉
- 国立天文台:形成中の太陽系を超新星爆発から守ったもの
- The Astrophysical Journal Letters:Insights on the Sun Birth Environment in the Context of Star Cluster Formation in Hub-Filament Systems 論文
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