米無人月着陸船「ペレグリン」打ち上げ、推進剤喪失で着陸は困難に

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1月8日に米民間初の無人月着陸船「ペレグリン」が打ち上げられた。船体はロケットから分離されて月へ向かう軌道に投入されたが、推進剤の漏洩によって大量の燃料を失ったとみられ、月面着陸は事実上困難となった。

【2024年1月10日 アストロボティック(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)

1月8日16時18分(日本時間、以下同)、米・アストロボティック社の無人月着陸船「ペレグリン(Peregrine)」を搭載した「バルカン(Vulcan)」ロケットが米・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。

ペレグリンの打ち上げ
「ペレグリン」の打ち上げ(提供:NASA

ペレグリン
無人月着陸船ペレグリン(提供:Official NASA Broadcast/Astrobotic)

打ち上げ約50分後の17時8分ごろ、ペレグリンはロケットから分離され、月へ向かう軌道に投入された。続いて全システムの電源が入れられて推進システムなどが正常に立ち上がり、宇宙船の運用が始まった。

しかしその後、推進力に異常が発生して姿勢制御が不安定となり、太陽電池のバッテリーを充電するうえで必要となる安定した太陽指向ができなくなった。そこでエンジン噴射によって太陽電池パネルが太陽の方向へ向けられたが、推進システムの故障が原因で大量の推進剤を失ったことが明らかになった。

初画像
ペレグリンから届いた初画像。この画像から、手前に写る多層断熱材(MLI)の様子が通常と異なっていることが確認され、推進システムの異常を示すテレメトリデータと一致する視覚的な手がかりとなった(提供:Astrobotic

当初計画では、ペレグリンは2月下旬に「粘りの入江」(虹の入江とアリスタルコスクレーターの間付近)に着陸予定で、軟着陸が成功すれば民間初の偉業だったが、トラブルのため達成は事実上困難となったもようだ。ミッションの目標は、ペレグリンが太陽指向位置を維持する能力を失う前にできる限り月面に近づけることへ変更された。

すでにペレグリンからは利用可能なすべてのデータのダウンロードが完了している。今後それらが詳しく分析され、ミッション終了後に推進剤の漏洩の原因を含めた報告書として発表される。

「ペレグリン」の打ち上げ中継録画「First US Commercial Moon Launch: Astrobotic Peregrine Mission 1 (Official NASA Broadcast)」(提供:NASA)