SLIM、岩石などを観測し休眠
【2024年2月5日 JAXA宇宙科学研究所】
月着陸実証機「SLIM」は1月20日に月面着陸に成功し、大きい重力のある天体へのピンポイント着陸という、世界初の技術を確立した。
しかし、月面への下降時にメインエンジンのノズル1つを失った影響で、事前の想定とは異なる、逆立ちのような姿勢で着陸した。そのため、着陸時には太陽光が太陽電池パネルに当たらず、発電ができない状態だった。それでも、月面では2週間ごとに夜と昼が繰り返されていることから、1月末ごろには西を向いてしまった電池パネルに太陽光が当たる可能性があるとして、運用チームではSLIMの復旧運用に向けて全力を注いできた。
28日の夜、SLIMの太陽電池パネルに太陽光が当たると発電が始まり、一度電源が切られていたSLIMが自動的に起動した。地上との通信の確立後、SLIMは搭載するマルチバンド分光カメラ(MBC)を用いて最初の観測画像を取得した。さらに30日から31日にかけては、探査対象である岩石などのマルチバンド観測も実施した。計画当初に予定されていた10バンド分光観測は順調に終了し、13か所の岩石やレゴリスといった期待以上に多くの対象に対して高解像度観測が行われた。これらのデータをもとに、岩石の判別と鉱物の化学組成の推定が進められる。
31日の運用後、SLIMは再び休眠に入った。2月中旬ごろには着陸地点の夜が明け再び太陽光が当たるようになるので、運用チームはそのころに運用再開に挑むという。
なお、SLIMのピンポイント着陸にあたっては多くの国の探査機との国際協力が行われた。インドのチャンドラヤーン2号からは高分解能観測データが提供され、着陸点の最終選定に利用された。また、NASAのルナー・リコナサンス・オービター(LRO)は上空から着陸後のSLIMをとらえ、その画像から、SLIMが着陸目標点から約57mほどしか離れていない地点で静止したとみられることが確認された。
〈参照〉
- JAXA 宇宙科学研究所:小型月着陸実証機(SLIM)搭載マルチバンド分光カメラ(MBC)による 10バンド分光撮像の成功について
- 小型月着陸実証機SLIM X:
- NASAのLROから、月面上のSLIMを撮影した画像が届きました(1月27日午後8時51分)
- SLIMとの通信を確立することに成功し、運用を再開しました!(1月29日午前8時4分)
- 米国のLunar Reconnaissance Orbiter (LRO)から、大変多くの画像データを提供いただいています(1月30日午後1時55分)
- チャンドラヤーン2号による高分解能の観測データを提供いただき着陸点選定を支援いただきました(1月30日午後1時56分)
- 1/30~1/31の運用をもって、SLIMは休眠期間に入りました(2月1日午後1時57分)
- SLIMが休眠状態に入ったことを確認しました(2月1日午後1時58分)
- NASA:NASA's LRO Spots Japan’s Moon Lander
〈関連リンク〉
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