「だいち4号」搭載のH3ロケット3号機、打ち上げ成功

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日本の地球観測衛星「だいち4号」を搭載したH3ロケット3号機が、7月1日12時6分に種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは計画通りに飛行し、衛星は正常に分離されて予定の軌道へ投入された。

【2024年7月1日 JAXA(1)(2)

7月1日12時6分42秒(日本時間、以下同)、地球観測衛星「だいち4号」(ALOS-4)を搭載したH3ロケット3号機が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。当初打ち上げは6月30日に予定されていたが、雷の発生など天候の悪化が予想されたために1日延期されていた。

H3ロケット3号機の打ち上げ
H3ロケット3号機の打ち上げ(提供:JAXA、以下同)

打ち上げの約5分後に第1段エンジンの燃焼が終了し、第2段エンジンが燃焼を開始した。その後もロケットのエンジンは正常に燃焼を続け、予定の経路と高度を飛行した。打ち上げの約16分30秒後に第2段エンジンの燃焼が終了すると、その約10秒後に衛星が無事分離され、衛星の打ち上げは成功した。中継では「やったー!おつかれさま」という声が聞かれ、安堵と喜びに包まれる地上の管制室の様子が見られた。

順調に飛行したH3ロケット3号機
打ち上げ後順調に飛行したH3ロケット3号機

その後、「だいち4号」の太陽電池パドルの展開が正常に行われたことが確認され、衛星が太陽の方向を向いて発電を行っており正常な状態にあることも確認された。今後は3か月ほどかけて衛星システムやセンサーなど搭載機器の性能確認などが行われ、高度約600kmの観測軌道へ入る。さらに軌道上での数か月間の調整期間を経て、観測を開始する。設計寿命は7年間となっている。

「だいち4号」の展開された太陽電池パドル
だいち4号に搭載されているモニタカメラが撮像した、展開後の太陽電池パドル1(左)と太陽電池パドル2(右)。「だいち4号」と地上局の通信確認のための試験電波により取得された

「だいち4号」は、電磁波を地表に向けて照射してはね返ってきた電磁波を受信・解析して地表の状態を映像化する「SAR(合成開口レーダー、Synthetic Aperture Radar)衛星」だ。雲を通過する電波を使って、地表面の様子を昼夜・天候を問わずとらえ、国土全体の地殻変動、災害状況、地球環境変化、森林管理、海洋上の船舶識別など多様な分野に貢献する。「だいち2号」と比べて観測分解能やデータ転送速度が向上しているほか、SAR衛星としては世界初となる、複数の地点から跳ね返ってきたデジタル信号(ビーム)を同時に処理する能力(「デジタルビームフォーミング(DBF; Digital Beam Forming)」)も備えていて広域な観測ができる。また、2号と4号を組み合わせた観測も可能になるという。

「だいち4号」の想像図
「だいち4号」の想像図。重量約3t、太陽電池パドルおよび各種アンテナ展開時の大きさは10m×20m×6.4m

今回のH3ロケット3号機の打ち上げでは、第1段エンジン燃焼フェーズ後の約20秒間に推力を絞る「スロットリング」という機能の実証も目的の一つとなっていた。スロットリングとは、燃料を消費して機体が軽くなるのに併せて機体の加速度が大きくなることを抑え、搭載している人工衛星への負荷を軽減するという機能だ。これも無事実証され、100点満点の打ち上げとなった。

H-IIAロケットの後継機であるH3ロケットの計画では、昨年3月7日に「だいち3号(ALOS-3)」を搭載した試験機1号機の打ち上げが失敗した。その後、今年2月17日に対策が施された試験機2号機が打ち上げられ、搭載した小型衛星が予定の軌道へ投入されて打ち上げは成功した。実験機2号機と今回の3号機の打ち上げ成功により、日本の大型基幹ロケットとしてのH3ロケットは、国内外から信頼される宇宙輸送サービスを提供する本格運用への一歩を踏み出したと言える。

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