X線分光撮像衛星「XRISM」と小型月着陸実証機「SLIM」、打ち上げ成功

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9月7日、X線分光撮像衛星「XRISM」と小型月着陸実証機「SLIM」を搭載したH-IIAロケットが種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは順調に飛行し、XRISMとSLIMはそれぞれ予定の軌道へ投入され、打ち上げは成功した。

【2023年9月7日 JAXA(1)(2)(3)三菱重工業株式会社

9月7日8時42分、JAXAのX線分光撮像衛星「XRISM(X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission、クリズム)」と小型月着陸実証機「SLIM(Smart Lander for Investigating Moon、スリム)」を搭載したH-IIAロケット47号機が、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。

XRISMとSLIMの打ち上げ
X線分光撮像衛星「XRISM」と小型月着陸実証機「SLIM」の打ち上げ(提供:三菱重工業株式会社)

打ち上げから14分後の8時56分、ロケットから分離されたXRISMは予定の軌道へ投入された。さらにその後、信号の受信や太陽電池パドルの展開完了が確認され、XRISMの打ち上げは成功した。今後は高度約550kmを周回する。

また、SLIMは打ち上げ47分後の9時29分に予定の軌道へ投入され、信号の受信や太陽捕捉制御も完了し、こちらの打ち上げも成功した。H-IIAロケットの打ち上げは今年1月以来で、41機連続成功となった。

打ち上げ中継録画「X線分光撮像衛星XRISM/小型月着陸実証機SLIM 打上げライブ中継」


XRISM

XRISMは2016年に運用を停止したX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の後継機で、X線望遠鏡「XMA」とX線マイクロカロリメーター「Resolve」、軟X線撮像装置「Xtend」を搭載している。とくにResolveはX線望遠鏡史上最大の38分角四方の視野を持ち、満月(直径約30分角)より広い視野を一度に観測できる。

XRISMの想像図
XRISMの想像図(提供:JAXA、以下同)

今後XRISMは約3か月かけて、姿勢、電力、通信など基幹機能の確立、搭載するX線マイクロカロリメーター「Resolve」の冷凍機の運転、その他の基本的な機能と性能が確認される。その後、最初の7か月間に初期較正観測や搭載機器の性能確認が行われ、3年間にわたる科学観測を開始する。


SLIM

月面着陸実証機であるSLIMは、「月の狙った場所へのピンポイント着陸」、「着陸に必要な装置の軽量化」、「月の起源を探る」といった目的を月面で実証する。

小型月着陸実証機「SLIM」プレスキットの表紙
SLIMプレスキットの表紙

将来の月惑星探査では、科学的価値や資源となる物質が豊富に存在するとみられる“降りたいところへ降りる”というピンポイントの着陸技術が必須となる。これまでは数km以上の精度だったが、SLIMでは画像照合によって100mのオーダーでの着陸を可能にする技術の実証を行う。また、小規模な機体で起こりやすい転倒を防ぐため、傾斜地に適した2段階式着陸を実施する。

今後SLIMは3~4か月飛行して月の近くに到着し、約1か月間、月を周回する。その後、「神酒の海」付近の「シオリ(Shioli)」クレーター近傍へ着陸する。このクレーター名は2019年に承認されたもので、SLIMが歴史のターニングポイントに挟まれる「栞(しおり)」となるようにとの願いが込められているとのことだ。着陸後は分光カメラを使って、月のマントル由来と考えられる物質の成分分析を予定している。この探査分析から、月の形成と進化の謎を解く手がかりが得られることも期待される。

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