「はやぶさ2」が次に訪れる小惑星は細長いかも

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「はやぶさ2」が2026年に探査する小惑星「2001 CC21」の大きさと形について、恒星食の観測結果を解析したところ、細長い形をしている可能性が示された。

【2024年8月9日 京都大学

恒星の掩蔽(恒星食)は、小惑星などの太陽系天体が恒星の手前を通過して隠す天文現象だ。掩蔽を複数の地点で同時観測し、恒星が消え、再び現れる時刻を計測すると、直接観測が難しい小天体のサイズや形を高い精度で推定できる。この分野ではこれまで、アマチュア天文家が観測や研究に大きく貢献してきた。とくに近年は技術が進歩し、従来は小さすぎて観測が難しかった直径数km以下の小惑星でも掩蔽観測の成功例が増えている。

小惑星(98943)2001 CC21は、現在「拡張ミッション」として飛行中の小惑星探査機「はやぶさ2」が次に探査する天体で、直径は約500mと推定されている。「はやぶさ2」は2026年7月に2001 CC21に秒速約5kmでフライバイ(接近通過)を行い、わずかな時間で表面などを探査する予定だ。フライバイの時間は非常に短いため、この小惑星のサイズや形を正確に知っておく必要があるが、今のところ詳しいデータはない。

2023年3月5日、この2001 CC21きりん座の10等星を隠す掩蔽現象が日本で起こった。各国の研究者や国内のアマチュアが国内の20地点で観測を行い、滋賀県の井田三良さんがわずか0.1秒程度の減光の観測に成功した。過去に直径1km未満の小惑星による掩蔽の観測成功例はほとんどなく、井田さんの成果はきわめて貴重だ。だが、残念ながらこの1地点での観測データしか得られなかったため、小惑星の形は推定できていなかった。

小惑星2001 CC21による掩蔽の観測地点
2023年3月5日に小惑星2001 CC21による恒星の掩蔽観測が行われた20地点。青い帯が小惑星の影が通過すると予報された掩蔽帯(幅600m)で、赤い線は予報の誤差範囲(1σ)。14番の赤い点が観測に成功した井田さんの観測地点(提供:千葉工業大学惑星探査研究センターリリース)

京都大学白眉センターの有松亘さんたちの研究チームは、1地点のみの掩蔽観測データから2001 CC21の形状を推定する新たな解析手法「DOUSHITE(Diffracted Occultation's United Simulator for Highly Informative Transient Explorations):ドウシテ」を開発した。この手法では、掩蔽で恒星が減光・復光する際の微細な光度変化に表れる、光の回りこみ(回折)の効果を正確にモデル化し、天体のサイズや形を高い精度で推定することが可能となる。

回折の効果は天体のサイズや形によって変わるため、恒星を隠す小惑星のサイズや形を様々に変えたモデルを使って光度変化の様子をシミュレーションし、実際の光度変化と比べることで、1地点での観測データからでも小惑星のサイズ・形状を推定できる。

解析の結果、2001 CC21の影の形として、長径約840m×短径約310mの楕円を仮定した場合に観測結果を最もよく再現できることが示された。この結果から2001 CC21の影の短軸と長軸の比を求めると、約0.37±0.09(約2.7:1)となる。「はやぶさ」初号機が探査した小惑星イトカワのような細長い形かもしれない。

観測された恒星の光度変動/小惑星2001 CC21の形状モデルの分布
(左)小惑星2001 CC21による掩蔽で観測された恒星の光度変化とシミュレーションの比較。黒の点とエラーバーは井田さんが観測した実際の光度変化、灰色の線はDOUSHITEによる、観測に良く合う光度変化モデルを重ね合わせたもの。明滅時に恒星の明るさがゆるやかに変動し、また非対称になっているのが、光の回りこみ(回折)の効果だ。(右)観測データを良く再現する、2001 CC21の形状モデルの分布。多くのモデルが長径約840m、短径約310mの楕円形の影に対応している(提供:有松亘(京都大学))

今回の新手法は、掩蔽観測で太陽系内外の小天体を研究する上で強力なツールになりそうだ。今回推定された2001 CC21の形状データも、「はやぶさ2」によるフライバイ観測の戦略を立てる上で大いに役立つと期待される。

小惑星2001 CC21にフライバイする「はやぶさ2」の想像図
小惑星2001 CC21にフライバイする「はやぶさ2」の想像図(提供:有松亘(京都大学)/JAXA)

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