いて座A*ブラックホールからやってくる高エネルギーニュートリノ

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由来のわからなかった高エネルギーのニュートリノが、天の川銀河中心の巨大質量ブラックホールからやってくるという兆候が初めてとらえられた。

【2014年11月18日 NASA

ニュートリノは電荷を持たず、電子や陽子とほとんど相互作用しない粒子だ。光や荷電粒子と違い、物質をすりぬけ、磁場に影響されることなく宇宙空間を飛び回ることができる。地球には太陽から大量のニュートリノが降り注ぎ、さらに太陽系外からはその数百万倍から数億倍ものエネルギーを持つニュートリノが飛来する。こうした高エネルギーのニュートリノは銀河同士の衝突やブラックホールへの物質の落ち込み、パルサー風といった大規模な現象で作られると考えられている。

天の川銀河中心部
巨大質量ブラックホールが存在する、天の川銀河中心部のいて座A*付近(提供: NASA/CXC/Univ. of Wisconsin/Y.Bai. et al.)

米・ウィスコンシン大学のYang Baiさんらは、高エネルギーのニュートリノが天の川銀河の中心に存在する巨大質量ブラックホールで生成されているという兆候を初めてつかんだ。NASAの「チャンドラ」などの天文衛星がブラックホール周辺で爆発的なX線フレアを観測した数時間後、あるいは数日後に、南極地下のアイスキューブ観測所でニュートリノを検出したのだ。研究チームでは、ブラックホール周囲の粒子が衝撃波で加速されて荷電粒子が作られ、それが崩壊してニュートリノになるという仮説を提示している。

この仮説は、高エネルギー宇宙線の由来というもう1つの謎のヒントともなり得る。荷電粒子から成る宇宙線は銀河内の磁場に影響されて進むためにどこから来たかわかりにくいが、銀河中心ブラックホールの衝撃波による加速がエネルギー源という可能性もある。

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