木星に見つかった「大冷斑」
【2017年4月18日 ヨーロッパ南天天文台/University of Leicester】
木星の大赤斑は数百年もの間消えることなく存在し続けている、地球が数個入るほどの巨大な嵐だ。時速600km以上の風が吹き荒れており、上空は摂氏1300度にまで加熱されている。
その大赤斑と大きさを争うほどの巨大な暗い構造が、木星の極域の上層大気中に見つかった。東西2万4000km(地球の直径の2倍弱)、南北1万2000kmの広がりを持ち、周囲よりも約200度ほど温度が低く、「大冷斑(Great Cold Spot)」と愛称がつけられている。
ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡「VLT」などを用いて15年以上かけて取得されたデータによると、大冷斑は、ゆっくりと変化している大赤斑に比べて揮発性がはるかに高いため、形や大きさが数日から数週間で劇的に変化するようだ。しかし、決して消えることはなく、ほぼ同じ位置にとどまり続けている。
この大冷斑は木星の強力なオーロラによって発生していると考えられている。オーロラが大気の中に熱という形でエネルギーを送り込むことにより、低温領域が上層大気中にできるというメカニズムで、これはオーロラによって作られる気象システムの初の観測例となる。
〈参照〉
- ヨーロッパ南天天文台: Great Cold Spot discovered on Jupiter
- University of Leicester: `Cold' Great Spot discovered on Jupiter
- Geophysical Research Letters: The Great Cold Spot in Jupiter's upper atmosphere 論文
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ南天天文台
- アストロアーツ:
- 【特集】木星とガリレオ衛星(2017年)
- 投稿画像ギャラリー: 2017年 木星
関連記事
- 2024/11/29 2024年12月8日 木星がおうし座で衝
- 2024/10/25 10cmの望遠鏡でイオの火山活動の変化を観測
- 2024/10/15 木星の衛星を探査、「エウロパ・クリッパー」打ち上げ成功
- 2024/09/10 【特集】木星(2024~2025年)
- 2024/08/27 探査機「ジュース」、世界初の月・地球ダブルスイングバイを実施
- 2024/08/07 2024年8月中旬 火星と木星が大接近
- 2024/07/03 2024年7月上旬 木星とアルデバランが接近
- 2024/04/12 2024年4月下旬 木星と天王星が大接近
- 2024/03/29 衝突シミュレーションで探る氷衛星エウロパの構造
- 2024/02/07 2024年2月15日 月と木星が接近
- 2024/01/11 2024年1月18日 月と木星が接近
- 2023/11/21 2023年12月22日 月と木星が接近
- 2023/11/16 2023年11月25日 月と木星が大接近
- 2023/10/26 2023年11月3日 木星がおひつじ座で衝
- 2023/10/20 2023年10月29日 月と木星が接近
- 2023/09/14 10例目、木星表面の閃光現象がとらえられる
- 2023/08/29 2023年9月4日 月と木星が接近
- 2023/08/02 【特集】木星(2023~2024年)
- 2023/07/05 2023年7月12日 月と木星が大接近
- 2023/05/26 木星大気の長期変動は「ねじれ振動」に起因する可能性